リクエスト
□あなたなら…
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時刻は既に夕方。
部活動のない生徒はほとんど校舎にいない時間、応接室で僕は一人黙々と書類を片付けていた。
時折紙を捲る音と筆をはしらせる音しかしない空間で僕はあることに気付き窓からグラウンドを見た。
いつもなら野球部員達の声が聞こえるのに今日はそれはない。部活は休みなのだろうか…
ならば山本はきっと先に帰ってしまったのだろう。付き合っているとはいえ、一緒に帰る約束はしていないのだから
そんなことを考えていると突然ノックもせずに誰かが入ってきた。
「よっヒバリ!」
「ノックくらいしてっていつも言ってるでしょ」
「ハハッ悪りぃ!今日部活休みなんだけど、ここで待っててもいいか?」
「……勝手にしたら」
まさかここに来ると思わなかった。僕と帰るために待っててくれるなんて…
素直に嬉しいと思うし、ありがとうという気持ちもある。けど、今までこうやって生きてきたんだ。今更急に素直になんてなれない。
だから僕はまたそっけない態度をとってしまう。
そんなことに気づいてくれているのか、山本は気にする様子もなくじっと僕を待っていてくれた。
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