Novel

□あいしていますこころはいらない
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空を仰ぎ見れば、血水の赤とはまた違った、夕日の燃える赤い光が私を照らしている。浅ましい私の本性を暴かれている気がして、瞼を閉じた。視界を遮断してもなお痛いほど感じる眩しさに一人の男を思い出した。

あいつは光だ。ヒトと言う蛾を侍らせ魅了する太陽だ。

程々に暖かいそれに気を良くして近付きすぎた蛾は皆燃え落ちる。

強すぎる光は私をも殺す。その太陽は眩しすぎた。今の夕日より強く 強く、私に近付き焦がそうとする残酷な光。私の心地良い陰も闇もぎらぎらとした下品な強さで照らして奪う。

あいつの肉は、骨は、私にどんな感触をくれるのだろうか。あの筋肉質な腕はさぞや良い悦楽をくれるだろう。あぁ いっそ私を殺してくれ、その逞しくしなやかな腕の力で私を縊り殺してくれ。



私は貴様を殺したい。私は貴様に殺されたい。



あの美しく下品な太陽ところしあいたい。




「三成」


声が聞こえた。

虚ろに気配のする方へ首をひねると、太陽が微笑みながら佇んでいた。

綺麗な朝日も、きらきらしい日中の光も、熱く照らす夕日もいらない。私は温くも暖かい 春の様な日が欲しいのに、一番欲しい光を貴様はくれない。


「かえろうか、三成」


穏やかに言うそいつは、いつだって太陽で在り続ける。

所詮手に触れることさえ叶わない。そんな貴様の心臓を喰らう私を夢に見て、小さく嗤った。

己の心臓に疼くこの甘い痛みの名を、私は未だ知らないでいる。


   
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