Novel

□しのぶこいのススメ
1ページ/4ページ



忍びは恋をしてはいけません なんて決まりは無いものの、其れを知らなかった頃の俺はそんな馬鹿げた感情なんてどこかの犬にでも食わせてしまえ と 思っていた。

自らがほれ込んだ主の為に里を裏切ってまで従おうとしたかすがを例に見てみれば、当に「恋は盲目」と言うやつなのだろう。(まぁ、アレが恋なのかは些か疑問だが)

そもそも俺は恋やらなんやら、ホレタハレタ、そんなのには一切興味を持ったことなんて無かったし、ましてや「恋に落ちる」なんて経験もした事は無かった。

どちらかと言うと職業柄、相手を色事で惑わす事の方が多いのに、そう簡単に恋なんかに心を乱されるはずが無い。


「人に恋をする」


そんな気持ちはもうとっくの昔に放り捨ててしまったのだ、 と 自らも自負していた。





……………はず。

  はず、なんだよねぇ………



「……ちょっと旦那、もっとよく噛んで食べてよ…」


「む、うむ」


横で口いっぱいに団子をほおばっているのは、俺の主である真田幸村    様。

他の者には虎若子やら日ノ本一の兵やらと謳われている男が、まだ幼さの抜け切らない顔で夢中になり団子を貪り食っている。



(…そんな表情知ってるのって俺様だけかもー)




なんて。



何て阿呆なことを考えてるんだと気付いたのはごく最近。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ