Novel
□あいしていますこころはいらない
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豊臣の為に人を殺す。秀吉様の為に敵を斬る。
その気概は初陣の頃から今まで不変である。
にもかかわらず、初陣の頃とは明らかに違う何かが私の中には蠢いている。ただ秀吉様の望む天下の為だけを想い人を殺める、純粋な私は死んでしまった。
鉄に似た香りに興奮を覚えたのはいつからだったのだろう。
振りかぶった刀の刃がやわらかくも弾力のある肉の中に入り込み、硬く滑らかででもザラリとした骨にぶつかる感触に身体の敏感な部分が熱を持つ。身体が震えるのが止められない。生理的なそれに 瞳が涙の膜で潤んで、無意識に唇が歪み、だらしなく恍惚的な吐息が漏れるのだ。
我を忘れて人斬りに快感を求める私は人では無くただの動物であった。
私の中で巣食っている悦楽という名の醜い蟲は、いつか完全に私の理性というこころを食い潰すだろう。秀吉様の為にという考えすら蝕まれ、唯一匹のきたならしい醜悪なけだものに成り果てるのだ。
私はそれがおそろしく、何よりその禁断に流されてしまいたいと思う自分自身がいっとうおそろしかった。
私は赤い水溜りを蹴り上げた。意味などない。そんなもの知るか。私の中の狂った炎はまだ衰えない。
下らない、下らない そんなことに恐怖する時間があるのならその時間を豊臣に費やせ 己の考えを棄てろ全てを秀吉様に捧げ尽くせ、嗚呼秀吉様秀吉さま ひでよし さま、
きっと秀吉さまの肉体は硬くもやわらかく押し返すような弾力があるだろう 骨”も硬く太く健康なそれで、血潮は噴水の如く勢い良く飛び散って:私の何もかもを赤くあかく 覆い」つくして正気を亡くさせる程の悦をくれる。む*せ返る死のにおいの中で私は絶頂を、迎えるのだ・あ ぁ 嗚 ぁあァあ呼アアァああぁ亜アァア黙れ黙れ黙れむ し、賎しい畜生が!
「嗚呼…あァ……秀吉さま…ひでよし、サマ ぁ………」
申し訳ありません、申し訳在りません 秀吉様、愚かな私をお許し下さい、ごめんなさい、 ころして、ください
しかし私は私の身体から噴き出す血液のにおいにすら愉悦を覚えるだろう。身体を刃にえぐられたなら、女のソコを男のアレに貫かれるかの如きキモチヨサに善がり狂うだろう。それこそ女の様に。