宝物
□[砂上の城]若桜様
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【子守唄】アシュルク甘
そろり、足音を殺して忍び込む。
ベッドの上の塊が動かない事を確認し、ルークはそぉ〜っと手を伸ばした。
あともう少しでシーツに手が届く…というところで、その手をがしっと掴まれる。
嫌な汗が、ルークのこめかみを伝った。
「―…俺様の眠りを妨げるとは、い〜い
度胸してんじゃねぇか。あぁ?」
ゆらりと、怒りのオーラたっぷりに起き上がったアッシュ。
「ア、ハ、アハハハハ……」
据わった瞳で睨まれ、ルークは誤魔化すように乾いた笑みを浮かべた。
「笑って誤魔化そうとすんじゃねぇ!」
「痛いっ!」
バコンと、小気味よい音を立てて殴られ、ルークは頭を押さえながら涙目で抗議する。
「いきなり殴る事ないだろ!?アッシュのばかっ!」
「……ほぅ?」
普段よりも低い声に、ルークの肩がビクリと跳ねる。
恐る恐る覗き込んだアッシュの顔は、それはそれは恐ろしいものだった。
「こんな夜中に忍び込んで来た揚句、部屋の主を『ばか』呼ばわりとは、随分偉くなったじゃねぇか。なぁ?レプリカ」
にこりと微笑んでいる、その顔。
だが普段滅多に笑う事のない彼の笑顔ほど、怖いものはなかった。
「……ごめんなさい」
素直に謝罪し、ルークはしゅんとうなだれる。
意気消沈した様子のルークにアッシュは嘆息し、足を組んで正座している彼を見下した。
「それで?」
つむじの向きが逆だなと、他愛ない事を考えながら口を開く。
「何の用だ」
「え…?」
「『え?』じゃねぇよ。俺に何か用があったから、こんな夜中に忍び込んで来たんだろ。聞いてやるから、さっさとしろ」
きょとんと見上げられる恥ずかしさから、アッシュは俺は眠いんだと顔を逸らした。
アッシュの横顔を見つめながら、ルークはえ〜っとと考える。