宝物

□[砂上の城]若桜様
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怖い夢を見て、一人で寝るのが不安で。
アッシュと一緒に寝たいと思ったから、彼の部屋に忍び込んだのだ。

夜中、相手の部屋に侵入するという意味の単語。
ルークは一つしか知らない。

「え〜〜っと、夜ばい?」

エヘッと笑い、小首を傾げる。

暫くの沈黙の後、ルークの唇が紡いだ単語に、アッシュの中で何かが切れた。
ダン!と大きな足音を立てて立ち上がり、指をボキボキと鳴らす。

「……どうやら、もう一発殴られてぇみたいだな?」
「えっ?や、ちょっ、待った!」

アッシュの怒りのオーラが増した事に気付いたルークは、必死に彼を宥めた。
何故かは分からないが、自分の発言でアッシュを(更に)怒らせてしまったらしい。

何とか彼を説得しなければ、確実に殴られるだろう。

「あの、俺、寝られなくて、それで…」
「寝られない?」
「そうそう。だから俺、アッシュに……」
「安心しろ」

コクコクと懸命に頷くルークに、アッシュはにっこりと微笑みかける。

「俺が眠らせてやる」

永久にな、と拳を振り上げた。

本気で永久に眠らせそうなアッシュに、ルークは言い募る。

「ゆめ…っ」
「あ?」

ピクリ、アッシュの手が止まる。

「また一人になっちまう夢見て、怖くて、不安で……」

俯いているルークの瞳から、ポタリと滴が落ちた。

「だからアッシュの傍に居たくて、アッシュと一緒なら寝られるかと思って、それで…」

次第に涙声になっていくルークに、アッシュは振り上げた手で額を押さえ、はぁ〜と盛大な溜息を吐く。
最早怒る気も失せ、アッシュは背中を向けてベッドに潜り込んだ。

背後から聞こえる鼻を啜る音に舌打ちし、おいと声をかける。
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