Book01
□王子様のお気の向くまま
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王子様のお気の向くまま(R-15)
ガーディアン・フェンリル支部所属、Aランクブレイザーのヤイバは、異常な程にモテる。
何が良いのかシロウには理解しがたいが、オフの日には女性が後を立たないと言う噂を聞く程度には、モテまくるのだ。
いつ聞いても、シロウには一つも面白くは感じられない。
冗談だとか、過大評価だろうとか口先では言っていても、意味も分からずムカついてしまうのだ――
(……べつに、俺はなんとも思ってねーよ。ヤイバがモテようがなんだろうが、関係ねーじゃん?)
そういう言い訳を内心で展開しつつも、視線の先には黄色い人集り。
その渦中にいるであろう、修行中のヤイバに、無性に腹が立った。
「邪魔してや――いい。やっぱ帰ろう」
腹の虫は収まらないが、行動に出てしまうほどお子様では無い。そう、ダイチの様にお子様では無いのだ。
懸命に言い聞かせて踵を返すと、キャーキャー騒いでいる女子共の声が良く響いていた。
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翌日のフェンリル支部は、意味の分からない剣呑さに包まれていた。
原因は勿論シロウ。
その八つ当たりの対象であるヤイバは、何故そんな態度――いや、分かり易いヤキモチを妬かれねばならないのか、いまいち理解できない様子。
「……タマキ」
「ん? どうかしたの、ヤイバ」
「どうしたもこうしたも……」
少々辟易とした様子で尋ねるヤイバに、タマキはあっけらかんとヤイバがモテるからだよと答えた。