Book01

□2009年7月7日 七夕祭☆
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 戦闘機の下面に、軽い爆破の衝撃が伝わってくる。
 別の視点を展開すると、装備の中では威力の弱いガンボットで隕石が穿たれていた。丁度、シロウの機体が通り抜け、ぶつかってしまう辺りを、残酷なほど正確に。

「無事か?」
「……相変らず、すんげー正確な射撃だな」
「ふん。鍛錬を怠らねば、貴様にも出来るだろう――ん?」

 急に先輩の言葉が止まった。シロウも何かあったのかと、周囲に注意にをしたが、端と通信が静かな事に気付く。

「……まさか、フォールド断層?」
「いや、今の隕石のせいだろう。かなり強い磁気を帯びている。お前の予想以上に接近の距離が早かったのも、そのせいだろう」

 腕は買っているのだからなと、綺麗に微笑んで言う男に、妙な気分になったシロウは生返事を返した。だが、とシロウは考えた。

(これはチャンスでは無いのか? コブは居れど、この際仕方がない)

「それで、いったい何が目的だ?」
「……七夕だろ? 今日」
「…………What?」
「天の川なんて、内側から見れるチャンス無いじゃん? だから、さ」
「It's romanticist」
「……ろまんちすと? なっ!! ちがっ――」
「今更だ。だが、お前が見たいと言ったのも、分からないでも無いな」

 先輩の言葉に、シロウもふとコックピットのシールドを仰ぐ。
 漆黒の闇。
 星々さえなければ、指の先さえ見えない久遠の闇。
 だからこそ、手を延ばしても掴む事のできない星に、憧れを抱くのだろうか? シロウは一人でそんな事を思いながら、そっと微笑む。

「満足したか?」
「え? あぁ。かなりな」
「そうか。なら、俺も規律違反をした甲斐がある」

 一瞬、シロウの思考がフリーズした。

「い、いま、なん――」
「規律違反をした、と言ったんだ。アサルトには俺の会話は聞えちゃ居ない」

 事もさらっと爆弾を投下するこの男に、シロウは眩暈がした。
 そして、これでは艦内のトイレ掃除ではすまなくなったと言う現実が、この幻想的な天空の光景を台無しにしてしまう。
 シロウは溜息をついた。
 だが、怒りが収まるわけも無く――

「ヤイバ!!!!」
「Do not worry」
「意味わかんねーよ!」

 ヤイバはふとほくそ笑む。
 シロウが知らないだけで、本当はこうなる事を予期し、願っていた。
 案外、七夕の願い事は迷信では無いのかもしれないと、部屋に飾った笹と短冊を思い浮かべるのであった。





- END -




 
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