クロ猫の長い夢

□序章 一年半前
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『…ハァ、ハァ、ハァッ』

少しは−−−少しは俺だって強いと思っていたんだ。あいつに出会うまでは……

『…ハァッハァ…とにかく…逃げないと…』

「ハハハ!逃げなくてもいいじゃないか」

冗談じゃない!捕まったら殺されるに決まってる!!

『助けて……父さん…』

二時間前−−

俺は、父さんの実験室へと向かっていた。
ナノなんとかというのを研究している父さんに、夜食を届けるためだ。

『訓練終わったばっかなのに……めんどくせ〜』

とは言ったものの、父子家庭である我が家では唯一の稼ぎ手だから、なんだかんだ言っても手伝いをするわけだが。

『父さ……?』

呼ぼうとしたところで、思い留まる。いつもとは違和感を感じたからだ。

『…誰かいるのか?』

小さい頃から父さんに鍛えられていたから、気配ぐらいなら簡単に探れる。
取りあえず意識をそっちに向けることにした。

「その研究データを渡していただければ危害は加えないと言ってるじゃないですか?」

知らない男が父さんと話していた。

「やらんと言っているだろ!」

「…そうですか。残念です。」

ゾクッとする笑みを見せた男は刀に手をかけた。

そして…

『……えっ!?』

父さんが倒れていた。
認識出来たのはそこまでだった。

トウサンガコロサレタ?
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