短編U

□今日の黒猫
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「ぎょーん」

「・・・、ぎょーん?」

放課後校舎裏。
告白?そんなんじゃない。うちの猫を探しに来た。それだけ。

「クロ!」

角を曲った、すごそこにいたのは真っ黒な毛をした猫。
ニャア、としわがれた鳴き声を聞けばすぐにうちの猫だと察する。
こんなに可愛げのない鳴き声をするのも珍しいくらいだから。

「・・・と、西?」

「・・・っち、」

クラスメイトの姿を見つけ、声をかけるだけで舌打ち。なんて仕打ち。

「おい」

「クロー」

「お前だよ、マヌケ面」

「・・・は?」

俺かよ。
愛猫であるクロを抱き上げちゅっちゅ、と他人から見たら気色悪い行為を繰り返してる最中だった。
不意に、なのかわからないが西は面倒そうにそう声をかけてくるなり、バッグに何かを閉まった。

「その猫から離れたほうがいいぜ」

「何言って・・・」

バン、グシャ?
そんな音を立てて何かが俺の手の中で破裂した。

「・・・」

視界が真っ赤に染まる。
あれ、どうなってんだこれ。

「えっと、・・・悪い。わけがわからん」

なんだこれは、クロが、猫が破裂でもしたのだろうか。
手の中に残るのは真っ黒でツヤツヤなんてしていなかった毛・・・なんてものはなく、
代わりと言わんばかりに真っ赤に染まった、グズグズしたのがたくさんあった。
え、グズグズじゃあわからないかな?
じゃあもっと詳しく説明するとしたら・・・そう、柔らかくてブニブニしていて、細長くて丸くて、拳サイズで。

「俺がヤったんだよ、その黒猫」

はき捨てるように、興味がないと言うように。
目の前の、クラスメイトは言い放った。さも当然のことのように。

「どうやら、西の普通と俺の普通は全く違うらしい」

だから、今のお前にはついていけそうにないわ。
ヘラリ、そう笑ってみせた。

「聞いてんだろ、変な猫とかの死体の話」

「あー・・・そういやあ担任がなんか言ってたな」

最近・・・ってか結構前からこの近くで元猫らしきものの死体がたくさん見つかっているらしい。
血とか・・・内臓とかがむき出し、だっけ?忘れた。

「これでわかっただろ」

「つまりは・・・西が言いたいのは、今までの事件の犯人は俺です。
この黒猫ををヤったのも俺です・・・か?」

「っち、・・・そうだよ」

なるほど、わからん。

「とりあえずさ、俺が言えるのは」

手の中にある血の塊をボウと見つめ、それから西に視線を移した。
この状況で笑顔とか怖すぎるから此処は苦笑にしておく。

「俺、他の猫は正直興味ないからいいとして、俺んちの猫を的にするのはやめてほしかったかな」

こんなんになっちゃったら一緒に暮らすこともできないだろ?
俺の制服についていた猫毛をつまむ。
毎日毎日、服については取ってを繰り返す面倒な事をしているのにも関わらず気がつけばついていた毛。
そう言えば猫アレルギーでもある俺は結構苦戦していたな。

「もうコイツは野良じゃないし」

ギュウと、原型をとどめていないクロを抱きしめ、目をそっと伏せた。


-end-
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