短編

□二輪の向日葵【中】
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「んー・・・終わったなあ」

「だなー。」

青く澄み渡った空を見上げ、いつの日かこんな空をコイツと見たな、なんて思いにふける。
結局なんだかんだ言って学生時代のほとんどはコイツとすごした。
もう、今となっては思い出だけれども。

「なんつったけー・・・お前は親父の跡を継ぐんだろ?」

ユラリと揺れる見慣れた紫のバンダナを眺めながら将来のことを思い浮かべる。
ああ、これから俺たちは待ったく別の道を歩んでいくんだ。
その事実が胸に風を吹かせる。これから俺の隣に、コイツの存在はなくなるんだ。
いつだって在った存在に今更気がつく。
つか、なんて俺らしくないんだ。きもちわる。

「おおー、海の家な。
お前は牧場主だよな?まあ、卒業って言ったって同じ町に住んでるんだからすぐに会える会える」

そう言って笑うアイン。
同じ町・・・か。見慣れた景色を見渡しながら・・・ゴメンって一言呟く。

「俺ここでは牧場やんねーんだ」

「は・・・え?」

驚いたように目を見開く友人の姿を視線で捉え、見ていられなくなってその場で立ち上がる。
あんなに悩んで、悩んで・・・考えて、ようやく決心したのに。
こんなにもその堅く決めたはずの心が揺れ戸惑う。

「いろいろと旅をしてさ、いい土地を見つけて・・・そこで牧場をやりたいんだ。」

「・・・」

「きっといつか戻ってくるさ」

牧場主が、牧場を放って里帰りなんて許されるはずがないのはわかっている。
そんなこと、アインだってわかるだろう。
だけど、こうでも言って自分の気分を落ち着かせなければ、
俺はきっとミネラルタウンに・・・アインに甘えてしまう。それだけは絶対に避けたかったんだ。

「はは・・・、お前らしいっちゃお前らしいよ。頑張れよ、牧場主」

「・・・ああ、お前もな」

俺たちの青春が、止められることなく終止符を告げた。
そして、始まるは・・・――運命の牧場物語


-fin-
 

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