BOOK

□通りすがりのただの人
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「んー・・・なんでねえんだ・・・?」

外は既に真っ暗闇。
身を屈ませ、地面をジックリと舐めまわすように見るが、探しているものを見つけることは出来ない。
もう、2,3時間もこの行為を繰り返しているのに。


「どうかしたんですか?先程から何か探しているみたいですけど」

そんな、男の声が真上から降りかかる。
反射的に顔を上げて、男の姿を確認し・・・体を固めた。

「うわ・・・イケメン」

「?どうかしました」

「あ、あ・・・いや気にしないでください」

つい出てしまった言葉は小さすぎて相手には聞こえなかったようだ。
少しホっとし胸を撫で下ろすのもつかの間。めちゃくちゃ見られてるんですけど・・・!!

「え・・・っと、あの、大丈夫ですから。お気遣いありがとうございます」

2時間も3時間も一人何かを探してりゃ親切な人は手伝うと言ってくれた。
しかし、見ず知らずに人に手伝ってもらうなんて悪すぎる。
だから毎度毎度断っていたのだが・・・

「3時間も探してるのに?」

「え、なんで」

知ってるんですか。
ギクリと、疚しい事はしていないはずなのに体が強張る。
て、いうか本当なんで知っているのだろうか。3時間も探していて見つからないなんてハズかしすぎるんだけど。

「3時間前からいたの、見てましたから」

笑顔でそう言われてしまえば答えることなんて出来ない。いや、正確に言えば言葉が見つからない。
えっと、じゃあこれは素直にお願いすればいいのか?わからない

「何落としたんですか?」

「えっと・・・指輪、です」

ニッコリと笑う男を目の前に、居心地悪く、痒くもない頬を掻いた。
そうですか、と早速屈んで探し始めた男を数秒見つめ、俺も目を凝らして地べたに視線を移した。




「知ってる」
ちいさく呟かれたセリフは、あえてのスルー


-fin-

NG集で相手視点up
 

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