ぼくたちの、かあちゃん

□ぼくたちの、かあちゃん (3)
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「ご飯できたよー。左門、机の上片付けてー。三之助、これ運べる?重いから落とさないでね」

「わー!きたぞきたぞー!」

「やったー!ハンバーグ!ハンバーグ!」



今日のご飯は左門も三之助もだいだい大好きなハンバーグ。
いつも2人が学校に行った後綺麗に整頓しておくのに、夕方にはもう玩具やら勉強道具やらでぐちゃぐちゃの机の上。
左門の片付けは片付けというよりか、机の下に隠してるだけだけど…まあ仕方ないか。
見てくれは綺麗になった机の上に、どんどんと出来た料理を置いていく三之助。



「…名前、今作ったのか?」

「んーん、ハンバーグは冷凍してたやつだよ」

「これ、休みの日にかあちゃんと左門で作ったんだー」

「へえー、…案外仲良くやってんだな。」



料理なんて苦手で生まれてこの方、したことがなかった私。
3年前にこちらに上京してから、初めて料理を作る大変さが分かった。
左門と三之助の好き嫌いは今より、もっともっと多かったし
母ちゃんの料理は美味しくないと全然食べてくれなくて、子育てにくじけて泣いていた毎日が懐かしい。
悔しいけど料理上手な留三郎に散々馬鹿にされながら教えてもらって、私もだいぶ料理の腕が上がったと思う。



「見て見て。お花のカタチの目玉焼きなんて、かわいいでしょ?」

「…けっ!食ったら同じだろーが」



ハンバーグの上にちょこんと乗せた花の形をしてる目玉焼きが、可愛いポイントだ。
せっかく作ってあげたのに、興味なさそうにしている留三郎。
ザ・男飯の留三郎の料理とは違うもーん。
食ったら同じだとか言ってたのに、私がお水を持って来ようと台所に戻ったことを見計らって
こっそり自分のケータイをとりだして、ちゃっかりご飯の写真撮ってる留三郎。




…なにアイツ。可愛い奴め。




「「かあちゃん、早く早くー!」」

「はいはい、待って待って」

「「いっただっきまーす!」」

「いただきます!」

「はい、召し上がれ」



美味しそうに食べる左門と三之助を眺めつつ、留三郎が文句を言わないで食べてるってことは不味くないってことだから安心した。
…あー、なんだか4人でご飯だなんて、久しぶりだなあ。
1か月くらい前に仕事が忙しすぎてげっそり痩せ細った伊作が来てくれた時以来だな、と思う。
あれ、そういえば、留三郎のヤツ最近まで可愛い彼女が居たはずだけれど…こんなところに来ちゃって大丈夫なんだろうか。



「留三郎、そういえば彼女は?…いいの?」



ビクッ



「留三郎、彼女がいるのかー!」

「え!写真見せて見せてー!ケータイ!!」



左門と三之助が興奮してキラキラと留三郎を見つめる中。
彼女という単語にビクッと背中を震わせ反応する留三郎を見て、私は全てを察した。
あちゃー、これはたぶんまた…。



「別れたッ!」

「…ねえ、今回早くない?」

「その話はナシだ!」



もうその話はしない!と言うようにガツガツとご飯をかきこむ留三郎。
SNSで2人の仲良さそうな写真を見て、いいねボタンを押したのはつい最近だった気がするけど…。
ゆるふわ系で文句は言わなそうな可愛い年下の彼女だったから、今回は長続きするかなーなんて思っていたけどそうでもないか。



「あ、留三郎、もしや振られたのかー?」

「なあなあ三之助、振られるってなんだー??」

「留三郎ったら好きな女の子に嫌われちゃったんだってー、ぷぷぷ」

「名前!うるせーぞッ!」

「可哀想だな、留三郎…」



私がそうからかうと、真っ赤になって大きな声をあげる留三郎。
まあどうせ留三郎のことだから些細なことでカッとなっちゃったんだろーな。
顔だけはまあまあカッコイイのに…、もったいない。
最近クラスに気になる女の子が出来たという左門が、そんな留三郎に同情したのか
これをやる、と自分が嫌いなブロッコリーを隣の留三郎の皿に分けてあげようとしてて笑ってしまいそうになる。



「左門はちゃんと食べなさい、一番小さいブロッコリーにしてあげたんだから。」

「ちぇー」

「左門にまで意地悪しやがって。左門は名前と違って、優しいなあ!」



よしよし、と満面の笑みで左門の頭を撫でる留三郎。
ふーんだ、元カノのことで留三郎の恋愛相談を何度も快く受けてあげたのはこの私なのに恩を忘れたか。



「カッとなって彼女に手でも出したの?」

「んなことするか!ボケ!」

「いたッ!またそーやって!暴力男!」

「うをッ!テメェ名前!こんの暴力女!」



怒った留三郎にぶたれた。
まあ、どうせやり返すから良いけど。
女の子に向かって、暴力女なんてフツー言う?
あの可愛い彼女ちゃんもこうやってやり返せばいいのに…。



「クソッ、女なんて知らん!」

「……じゃあ、なんでウチに来るのさ。」

「あんな家居られねーよ、……アイツの荷物、…あるし。」

「うわ。捨てなよ、…未練タラタラ」

「クソッ……。」



女々しい一面があるのも、昔から。
悔しそうに顔を歪める留三郎の背中をポンポンと慰める。
なんだかんだで留三郎は優しいから、もしかしたら浮気でもされたのかな?
…なんて、お茶をすすりながら考えてみるけど
まあ、どうせまたすぐ次の彼女が出来るでしょ。大丈夫だよ。



「ごちそうさま!」

「「ごちそうさまー!」」

「お茶碗ありがとう、左門も三之助もいい子。えらいね」



さすがハンバーグなだけあって、完食してくれた2人を見て今日もご飯を作ってよかったなあと思う。
そして、最近左門と三之助が覚えてくれた唯一のお仕事。
ご飯を食べた後の食器運びを見るのが、毎回の楽しみだ。
ああん…駄目だ、何回見ても感動してしまう…私のいい子たち…。
私も携帯で写真撮っておこう…。パシャ。



「よし。もう沸いたろ、風呂借りるぞー」

「え!留三郎…、もしかして今日泊まってくの?」

「当たり前だろーが、ほら左門!三之助!行くぞー!」

「「お風呂だー!」」



ねえ、留三郎。
時々こうやって留三郎が様子を見に来てくれるのは
私たちのことを心配しているからだって知ってるよ。





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食満くんはいい人
だけど
なんとなく彼女とうまくいってなさそうな気がします(偏見のかたまり)

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