誰よりも好きです、好きです

□ 誰よりも好きです、好きです
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マカロンを貰った次の日。
どうしようか散々悩んで悩んで悩んだあげく、お礼くらいは言わねば失礼だと思って
それとなく名前にうまかったありがとう、とこっそり伝えると
名前は表情を変えずにうん、と言ってそのまま自分の席についた。
その日から特に発展があるわけでもなく、名前との接点も変わらず、特に無し。
お菓子を差し入れしてくれるなんて、もしかして名前が俺のことを好きになってたらどうしよう…と
勝手に不安に思っていたけれど、恥ずかしながらそんなことは全く無いみたいだ。
…さて、どうしたもんかと名前と浜の恋は今でも俺を悩ませている。
部活の始まりにストレッチをしていると、走ってこちらにやってくる浜が見えた。



「竹谷先輩、今日…ッ、俺、名前先輩を見かけました…!」




俺が居るところに真っ直ぐと、勢いよく走ってきて、すごく嬉しそうにキラキラとした表情でそう報告する浜。
下校中にでも会ったのかな、名前の姿を見ただけで幸せなんだろうな。
ああ…、浜って、すっごいな…



「なあなあ、聞いても、いい?」

「はい!」

「…浜ってさ、名前の、何が好きなんだ?」

「えッ!!!」



ただ単純にそう疑問に思った。
だって、一目惚れしたって言っていたし、名前のことを見かけただけなんだろう。
特にこれといって、恋に落ちるようなエピソードがあったのだろうか。
それとも、単に顔が浜の好みだったのだろうか。
答えやすいだろう質問を投げかけたのだけれど
浜は俺のそんな質問に、目を真ん丸に見開いて耳まで真っ赤になっている。
…え、なにその反応。



「あ、あの、その、えっと…ッ、俺」



急にどもりだして、もじもじと手をいじっている浜。
後輩なのに凄く気が利くし、やることが早くて、どこまでも真面目で
ハキハキしていて、返事もよくて、元気いっぱいのいつもの浜とは違う一面。
そんな一面を引き出してる名前という存在が、とても不思議に思えた。



「あのさ、浜……。別に俺に告白するわけじゃないんだから」



緊張してないで落ち着けよ、と苦笑いで言うと
スミマセンッ!と顔を赤くしてうつむく浜。
息がつまるほどに、名前のことを考えているんだろうな…。
なんでだろう、だってアイツは無口でそんなに笑わなくって
そこらへんに居るような普通の女子よりも、目立たない存在なのに。



「なん…だろう、俺自身、正直、よく、わからないんですけど」



俺にはない、真っ直ぐで熱い眼差し。
その瞳は、まだ話したこともない名前を思ってる。



「でも、その…、なんだか、びびっときたんです!」

「ビビっと…?」

「初めて、名前先輩を見て、俺、俺…」



話したこともないヤツなのに。
お互いのことなんて何も知らないはずなのに。
なんで、こんなにも強く惹かれてるのか。
なんで、こんなにも真剣な顔で話せるのか。



「きっと、これは恋だって、確信したんです。」



名前に、一途に恋をしている浜。
ああ、きっと、これが青春って、やつなんだ。



「そう言えばさ、名前って、料理部なんだってよ。」

「ええッ!先輩が…料理部、ですか!それ、やばいです!可愛いすぎる…ッ」







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いつも一生懸命の浜くん

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