ぼくたちの、かあちゃん

□ぼくたちの、かあちゃん (6)
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昨日は名前の家に泊まった。
現在、朝の8時半をまわったところ。
起きるには丁度良い時間だって言うのに、コイツらときたら…



「ほーら、起きろ起きろー!」



ったく、こんないい天気だっていうのに一体いつまで寝てるんだか…。
起きろ起きろと声をかけるが、寝返りを打つだけで誰からも返事はない…。
しびれを切らせた俺はずんずんと窓に近付き、閉められていたカーテンを思い切り開けて、部屋に光を入れ込む。
ふー、すがすがしい朝だ…!



「うー……、まぶしい、とめ、さぶ、ろう…」

「お。…名前、とっとと起きやがれ。」

「…おねがいします、…もうちょっと、ねさせて、ください」



朝日のまぶしさに起きたのか、目をぎゅっとつぶって気だるそうにそう言うと
そのまま、ぐっと頭まで毛布をかぶって、縮こまる名前。
はー、朝が弱いのって、大人になっても変わらないのな…。
小学生の頃はよく、名前の準備ができるまでみんなで玄関で待たされてたっけ。



「グダグダしてたら1日が勿体無いだろーが!今日は野球しにいくぞ! 」

「え、…野球!?いくー!」

「お!起きたか、三之助!暑くなる前に行くぞー」

「…僕も…やきゅう、行くのだ…」

「おー!左門も偉いぞ!起きたら顔洗ってこい」

「ほら、こっちだ左門。行くぞー」

「…ふああ、はあーい」



野球と聞いて飛び起きた三之助と、まだ眠たそうにあくびをしている左門。
三之助が顔を洗うためのタオルを左門の分まで準備して渡してあげているのを見て、感動した。
左門の手を引きながら仲良く洗面所へ向かうその姿をみながら、うんうんと一人で頷く。
なんだかんだ、一生懸命やってるんだなこの兄弟は…
つい最近まであーんなに小さかったのに…感動しちまう。
それなのに、コイツらの母ちゃんときたら…



「うー…、ねむいー……」

「…おいコラ。ねぼすけ名前。さっさと起きやがれ。」

「やーだー…。」



布団の上で毛布にくるまっている名前に聞こえるように側に近寄って、身体をゆさぶる。
強硬手段だと勢いよく毛布をはがすと、小さく丸まってぐっと顔を枕にうずめている名前。
こいつは子供か…と、その姿に呆れて思わずため息が出た。



「…やあだ、おかあさんみたいに、おこさないで」

「母ちゃんはお前だろーが。しっかりしろ。」

「んー、…くすぐったいからやめて。」



寝ぼけた目で、嫌そうに俺をじとっと見つめる名前。
ずいぶん伸びたな…と思って、昨日俺が丁寧に乾かしてやった髪の毛をさりげなく触ると
くすぐったそうに少しだけ笑いながら、手を振り払われた。
その笑った顔がいつもよりほんの少しだけ可愛いなんて思ったのは…
きっと調子に乗るから、…秘密だ、コノヤロウ。



「…とめさぶろうは、…朝はやすぎ、……おじいちゃんみたい」

「お、おじいちゃん…だと…!」

「だからおんなのこに嫌われるんだよー」



…前言撤回、全然可愛くない。
…クソクソなにが女の子に嫌われるだ、人の気も知らねーで。



「それとこれとは関係ねーだろーが!……っ、」



いつまでたっても馬鹿にしやがって憎たらしい奴め、と睨みつけようとしたのに
寝間着姿の名前の胸の谷間が目に入って、正直動揺した。
ガキの頃あんなに貧乳で悩んでいたのに、胸だけは立派になりやがって…
俺が幼馴染みだからって油断してるんだろうけど、男と居るのにこんな格好してると襲われるぞ、…コラ。



「………ねえ、留三郎ドコ見てるの。」

「い、いいのか?さっさと食わねーと、冷めるぞ?」

「え…?冷める、って…」



ヤバイ、ばれたと思って話を逸らす。
俺の言葉を聞いた途端、ぱっちり目を開いた名前と目が合う。
さっきまで嫌だ嫌だと愚図っていたのに、突然がばっと起き上がった。
なんだよ…いきなり起きんじゃねーよ。



「留三郎がエプロン……、してる…!」

「ああ、テキトーに借りた。」

「もしかして、朝ごはん、つくってくれたの?」

「……ま、まあな。」

「留ちゃん!」

「うわッ!」



ゆっくり頷くといきなり起き上がった名前にガバッと抱きつかれた。
あまりに突然だったから後ろに倒れそうになって、慌てて名前の体を抱きしめるような形になる。
おいおい、なんだ、なんだ、この状況は。
冷静に考えると、途端に恥ずかしさで一杯になる。



「だあああ!暑苦しいから離れろ名前ッ!!」

「ねえねえ、何をつくってくれたのさ」

「人の話を聞けッ!!」

「ああー!かあちゃん!僕も!混ぜろ!留三郎ーッ!」

「なんか知らないけど、俺も!留三郎ー!」



3人に抱きつかれて、身動きができないこの状況に呆れて笑いが出た。
毎日大変だろうけど、元気にやってるみたいで、よかった。




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今回の男前食満くんポイントは、エプロンです
食満くん編はこれで一旦終わりで、次は別の人をだそうかなと思ってます

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