ぼくたちの、かあちゃん

□ぼくたちの、かあちゃん (15)
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「よしッ!かき氷でも、食いに行くかー!」

「わあ!いいのか!かき氷!かき氷!」

「やたー、いくいくーー!」



小平太にそう誘われた左門と三之助は一目散で倉庫に走って、母さんに昔に買ってもらった自転車を引っ張り出して
小平太とかき氷を食べに行くんだー!と嬉しそうに報告してくる。
かわいい…でも、お願いだから迷子だけにはならないでね。



「いってらっしゃーい」

「は?」

「え、……小平太。私自転車ない。」

「あるぞ、ほら。」



3人を見送って、私は実家でゆっくりしてよう、と思って手を振っていると
一体オマエは何を言ってるんだ?と言いたげに私を見つめた小平太。
チョンチョン、と自分の自転車の後ろを指差した。
え…小平太の後ろに乗れってこと?
それ、本気で言ってる?









「でだ、留三郎と伊作は元気か!」

「うん、げんきー!って言うか、小平太!飛ばしすぎだからーっ!」

「仙蔵はさっき会った!」

「ねえ、小平太!聞いてるーっ!?」

「アイツ相変わらず女みたいに白いな!」

「ねえってばー!」



嬉しそうに笑いながらガシガシと勢いよくペダルを漕ぐ小平太。
その後ろで、自転車から落ちないように必死に小平太の腰にしがみつく私。
ねえ、もうそんなに元気な歳じゃないのよ私たちってさ、なんて言っても小平太には伝わらないだろうな…。
半ば諦めているとキキッとブレーキをかける小平太。
急ブレーキをかけられて、小平太の背中にうっと鼻をぶつける。



「名前!」

「どうしたの!鼻ぶつけた!」

「腰じゃなくてここだ!ちゃんと掴まっとけ。」



小平太の腰を掴んでいた手を強引に剥がされて、小平太の腹にぎゅっとまわされる。
だって、小平太ってば、背中も汗でビッショリなんだもん…。
年甲斐もなく着ているタンクトップの一部が、もう汗で色が変わっている。
でもこうなったら振り落とされるよりマシかな…と思って、そんな背中にくっついた。
それでいい!と笑顔で振り向いた小平太はもう前髪にしたたるくらい汗ビッショリかいているし…。
うわ、やだもう…。



「もう汗かきすぎ代謝よすぎ!って、わあ!」

「今度はなんだ?」

「すごい腹筋!なにこれ!」



ぎゅっと手に力を入れてもビクともしない硬い腹筋。
小平太って、こんなにお腹の筋肉ついてたっけ。
前までぽよんぽよんだった気がするのに…。
文次郎のムッキムッキの彫刻みたいな筋肉よりも、このくらいの筋肉が好きだななんて思った。



「…ま、まあ、力仕事だからな。」



そっか、きっと毎日一生懸命仕事頑張ってるんだね。
私と一緒で早起きがあんなに苦手だったのに、小平太偉いね、大人になったね。
小平太がかっこいいと初めて思った気がする。
このくらい当たり前だと言う小平太は、前を向いているけど耳が真っ赤になってた。
あれ、珍しい…。



「小平太、照れてるでしょ。」

「名前!うるさい!そんなことはない!」



後ろから顔を覗き込もうとすると、ヤメロ!と顔が見えないようにそむける小平太。
小平太のくせに可愛いところもあるんだね、と思っていると
後ろから左門と三之助の待て―!と言う声が聞こえた。



「ヤバイ!追いつかれる!飛ばすぞ!名前掴まっとけ!いけいけどんどーん!」

「きゃー!だから小平太!!速いってばー!!」

「小平太!待て待てどんどんーー!」

「左門!早くこげ!追いつくぞー!いけいけどんどーん!」

「ねえ!左門と三之助に変な言葉覚えさせないで!!」






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なんとなく夏は小平太に汗びっしょりでいてほしい
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