誰よりも好きです、好きです

□誰よりも好きです、好きです
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名前か…。



高校三年になって初めて名前と同じクラスになって
それまではお互い名前すら知らない同士だったし…
今もクラスメイトではあるけど、これといって話すような共通点もないし…



ヤバイ、俺…。
浜にあんなこと言ったけど、名前のこと全然知らない…!



それがどんなきっかけかなんて、今となっては覚えてすらいないのだけれど
おそらく名前に竹谷くん、って呼ばれたから
皆に呼ばれてるみたいにハチでいいぞ、って言ったくらい。



あれ…?
名前との、ちゃんとした会話って…
もしかして…、こ、これだけか…?



机に顔を伏せて、真剣に授業をしている木下先生にバレないように、はあーと静かに深い溜め息をつく。
…浜に任せておけと言ってみたものの、どうやって2人をくっつければいいのか想像がつかない。
名前に、なんとかして陸上部の活動を見てもらう?
それとも、浜を教室に連れてきてどうにか名前と話しをさせる…?
いやいや、偶然を装って無理やり2人を引き合わせる?



どれも…現実的じゃないじゃんか…。
ううっ…、困った…。



木下先生のいつもと変わらず熱心な授業も全く耳に入らず
1人ぼーっとそんなことを考えていた。



浜は、名前に一目惚れしたって言ってたっけ。



一目惚れ…、ねえ。



名前って、とりわけ目立つ存在ではないし、言ってみれば地味な方だしなんでだろう…。



能天気な俺は、人生で一度もそんな大切な相談を他人からされたことなかったし
ましてや、大事な陸上部の後輩からの真剣な相談事…。
真面目で頑張り屋の浜の恋を、どうにかして成就させてやりたいと思う気持ちは、ある…。



だけど…、どうすっかな…。



ふと教室の自分の席から、一番窓側のほうに座って授業を受けている名前を眺める。
じっと木下先生が書く黒板を、真っ直ぐ見つめている名前。
髪の毛がたまに風に揺れていて、俺と違ってサラサラなんだ…とか
意外に女の子らしい可愛いシャーペンを持ってるんだ…、とか
そんなくだらないことばかり思ってしまう。



きっと名前は、今俺に見られてるなんて、考えてもいないんだろうな…。



きっとこれは恋なんだと言っていた浜。

その相手は、俺のクラスメイト…。



うッ…。



なんだか、すごくむず痒い…
そんなことを思っている間に、もう授業のチャイムが鳴って、俺はまた溜め息をついた。




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ついついスーツかジャージで授業をする
木下先生の姿を想像してしまいました


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