ナイモノネダリ

□貂と赤
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忘れるな。


アタシの名前は赤だ。
















ああ、くそ!

失敗した。



「なんか機嫌悪くなぁい?」


目の前にいるのは、貂。


三白眼と片八重歯が目立つ男。


今日、アタシたちは久しぶりに繁華街へと足を運んでいた。


理由なんてあるようで、ない。


貂が、暇だ!とウルサイから仕方なく付き合ってやっている。


「そうだね。週末なこと忘れてた」


華の金曜日。

その為か、やけに人が多い。


平日ならばもう人も少なくなっている時間帯なんだろうが、明日が休みというやつが多いらしい。

人が減る気配がなかった。


「人酔いする……」

「大丈夫ー?どっかお店入ろっかぁ?」


いつも曜日を意識しないからこうなるのだろう。

とりあえず人混みが苦手なアタシは適当な個室居酒屋を見つけて、そこに避難することにした。


「いやぁ、それにしても赤ちゃんと一緒に歩くと目立っちゃうねぇ」


貂は呑気にアクビをしている。


「あ゙ー?赤いからだろ」


アタシの髪は原色の赤だ。

さらに眉もアイラインも赤のアートメイクをしてしまってるし、服も爪もカラーコンタクトだって赤。


通りすがりの人間は、アタシをまるで動物を見るような奇怪な視線を向けてくる。


それこそ、アタシの人酔いの原因。
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