ナイモノネダリ
□恢復
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夢って全部悪夢だと思っていた。
「おはよう、赤」
目が覚めるとそこは病院。
アタシの腕から繋がる細い管と、規則的な音、独特のにおいで理解する。
相変わらず真っ白な天井は不気味で苦手だった。
「……どれくらい寝てた?」
アタシの横でなにやら作業する雨種を尻目に、壁にかかってる時計を見て口を開く。
13時。
時間と外の暗さから、窓とカーテンが閉まっていても雨が降っていることに気がついた。
「丸2日くらいかしら?今日は月曜日よ」
2日か。
「どーりで体が重いわけだ」
「だいじょぶ、大丈夫。赤の回復力なら二週間もあれば元のように動けるわよ」
撃たれた肩は包帯が何重にも巻かれていて、それから、体の至るところにガーゼが貼ってあったり、内出血が目立つ。
自分が女だと言うことに疑いを持ってしまいそうだ。
「貂くんと玲子さん、さっきお昼ご飯食べに行っちゃったけどもうすぐ帰ってくるんじゃない?」
アタシの点滴を確認しながらそう言うと、医者である雨種は扉を開ける。
「うん、じゃ、また後で様子を見に来るわね」
一つに纏められた艶やかな黒髪を揺らしながら、雨種は病室を出ていった。
アタシは思うように動かない体を、必死に起こしてベッドのとなりに置いてある携帯に手を伸ばす。
切れてる電源を付けると、何件かメールと着信があった。
ちなみにここが病院とか、そういうのは関係ない。
もちろん、棚に吸殻がいくつか入った灰皿が置いてあるのも。