ROJO

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 テレビのなかの人間が、無機質な声で何年か前に起こった殺人事件の裁判の判決をアタシに知らせていた。

『無罪判決』

 ある夏の昼間。天気が大変良い。

 ミンミンと、蝉が五月蝿い。

 アタシは冷蔵庫の中から牛乳を取り出し、それで喉を潤す。

「身長でも伸びないかなー」




 ふ、と。


 牛乳を飲むアタシの姿を映した鏡がやけに赤くて、それが滑稽で、虚しくて、馬鹿らしくてアタシ自嘲ぎみに笑った。


『許さない……』


 どこかでそんな声がする。


 一気飲みして空になった牛乳のパックを適当にその辺に捨てるとアタシは出掛ける支度をする。

 今日あたり、新しい仕事入ってくんだろ。

 少しワクワクしながら寝起きのボサボサの髪を適当に整えると、化粧をした。


 ふ、と。


 鏡に映ったのは相変わらず赤い、アタシだった。

 そんなアタシにアタシは今日も真っ赤な口紅を塗った。
 
 

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