短編
□君だけに告げるヒーロー理論
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「助けて!」と叫べば必ず現われるヒーロー。
彼らはどんな時でもどんなところにいても、ピンチな人々を救うことが出来るんだよ。
それってすげーことだと思わないか?
「……うん、確かに」
ショートケーキの苺にフォークを突き刺しながらやる気のない声で目の前の彼女は言った。
「なんだよ。俺の話に興味はないのかよ」
俺は身を乗り出す勢いで彼女に迫った。
まあ机に阻まれているため近寄れはしなかったが。
「だって、どうせ『俺もヒーローみたいになりたーい!』とかって言うんでしょ」
苺を見つめながらため息混じりに言い放ち、そして苺を一口で食べた。
その様子を見ながらも、実に彼女の言う通りだったので何も言い返せなかった。だって、ヒーローってかっこいいじゃん。
それに、さ。
思ったことを口にしようとする前に彼女が視線をケーキからこちらに向け、まっすぐに俺の顔を見据える。
「それで、あんたは私のことを守ってくれるんでしょ?」
さらりと言い放ち、にこりと微笑む。
「あ、ああ……」
その笑顔は反則だろ。
みんなのヒーローにはなれなくとも、俺はおまえだけは絶対に救うよ。
そう誓いながら手を付けていなかったモンブランにフォークを突き刺した。