短編

□お隣さん
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そんなことを思いつつも、新しい席になってから2週間が過ぎると、この状況に次第に慣れている自分がいた。
今ではお互い何も言わなくても自然に席を寄せ、そして隣人は今日も居眠り。正直、教科書なんか見せる必要性なんかどこにもないのに。
しかし何故か毎時間こうなってしまう。それは隣人の男が無言で机を寄せてくるからなのだろうか。

いや、そうじゃない。確かに最初は面倒で嫌だったけど、今ではその事が当たり前と思える以上に楽しみにしている自分がいる事を否定出来なかった。
こう思うようになったのはどうしてだろうなんて考える暇などないままに。


今日も隣人は「教科書見せて」と言わんばかりに無愛想に机を寄せてくる。私もそれに答えるように少しだけ机を寄せる。仕方ないから見せてあげると言わんばかりに。
この行為も次の席替えまで、あともうちょっとだけ。

次もあなたの隣人になれたらと思いながら。


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