短編
□最期の景色
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※微死ネタ注意。
ごつんという鈍い音と共に背中が地面へとぶつかる感覚がした。
視界には空が広がる。憎いほど青々とした、空が。
直ぐにその景色を遮るように覗き込んでくる一つの影。泣きそうな顔をしたあいつが世界を支配する。
どうした、と問い掛けようとしたのに声はかすれて半分も伝わらない。
頬に暖かいものが触れられる。ああこれはあいつの右手だ。
なんでそんなに悲しそうな顔をするのか、と問い掛けようとしたら全身に激痛が走る。
そうか俺は…
徐々に広がる血の海に横たわるは一人の男で。
好きだった、と語り掛けようとしたけれど既にそれは必要なくて。
最後の力を振り絞って頬に添えられた右手に己の左手を重ね、ぎゅっと握り締めた。
嗚呼最期に君の姿を焼き付けよう。