短編

□もしも僕らに明日がなかったとしたら
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「もしも僕らに明日がなかったとしたら、どうする?」

それは突然の問いかけ。
昨日の延長線上の今日を生きているつもりの私にとっては、とても想像だに出来ない難しい問いでした。

たとえば、足元がガラガラと崩れ落ちて真っ暗闇に突き落とされるような。
突然、世界から私以外の全てが消えて孤独に取り残されるような。

そんな現実味のない例え話のはずなのに。
私の心はどうしようもなく不安にざわつきました。

もしも私たちに明日がなかったとしたら。
もしも私だけににいつもの明日が訪れたとして。

「……そんなの、嫌だよ……」

例え嘘や冗談だとしても、一人になる明日なんて想像したくなかった。
私はもう何も失いたくはありませんでした。

「もしもの話、だから。そんな悲しそうな顔をしないで」

あなたの手が、私の頬にそっと触れる。
頬から伝う温もりは確かに今私たちが今日を生きている証に他なりません。


……もしも僕らに明日がなかったとしたら。

この温もりがやがて消えてしまうように、いずれ明日もなくなってしまうのだろうか。

その問いが見つからないままに、あるはずの明日を目指して生きている。

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