短編
□僕は何にもなれない
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僕は、結局何にもなれないことを知ってしまった。
鳥になりたいからと高所から飛び立ってみたところで、それはただの投身自殺でしかならない。
魚になりたいからと海中深くに沈んでみたところで、それはただの溺れている人にしか見えない。
ただ闇雲に足掻いてみても、僕は目指すべき僕にはほど遠い。
1+1が2しかなれないように、僕の進むべき道はただ一つと決まっているのだろう。
だから、僕は何にもなれない。
結局はなれない何かに幻想を抱きながら生きるしかないのだ。
しかし、そんなセンチメンタルになる必要などないわけで。
何故なら世の中の殆どがなりたいものになれず、ただ目の前に見える道を突き進み、そしてそのままゆるやかに死を迎えている。
嗚呼、なんと滑稽なことだろうか。
だから、僕がどんなに君を恋い焦がれていたとしても。
もう君に想いを伝えることすらできない。