短編

□お隣さん
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「なあ、教科書忘れた。見せて。」

そう無愛想に言いながら机を寄せてくる私の隣人。私は無言でそれを受け入れ、机と机の狭間に教科書を広げる。
この席になってから毎度の光景となっていた。


学校での月一の楽しみといえは、席替え。これにより向こう一ヶ月の授業のモチベーションが決まるといっても過言ではない。その運命を握るのがくじ引きであり、くじ引きが全てを決めるのだ。
全てを、といっても席順だけではあるが。

その席替えシーズンが今回もやってきた。
恒例のくじ引きが始まってからは、教室内からは感嘆の声やこの世の終わりのような声をあげるクラスメートが続々と増えていた。
そんな席替えで私はなんと一番後ろの、しかも窓際という一番といっても過言ではない位の場所を手に入れた。

初めての窓側の後ろの席で最初はとても嬉しく思っていたが、問題が一つあった。隣の奴がそれはそれは不真面目な野郎だった事だ。
毎日つぶれたせんべいみたいなカバンを引っ提げて学校に来たかと思うと、授業中はいつも居眠り。毎時間のように教科書を貸してと迫ってくるが授業なんかまるで聞いてない。私から教科書を借りる意味などあるのだろうか。
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