短編

□黒の告白
1ページ/1ページ

真っ白い便箋に黒い文字を走らせては直ぐに真っ黒く塗り潰す。その作業を先ほどから何回、いや何十回と繰り返している。
ふう、とため息を一つつき窓の外を見ると烏が一羽空の向こうへと飛んでいった。

出会ったときから私たちの関係は一歩たりとも進まない。お互いに意地悪をしあうような、まるで犬猿の仲。それが私たちの在り方。
今まではそんな友人にすらなれない関係でもいいと思っていた。しかしそれが苦痛に感じるようになったのはいつからだろうか。この真っ白い便箋のようにまっさらな気持ちで接することなんて出来なくなっていった。
その気持ちが恋だのという、私にはおおよそ無関係だと思っていたものだと気付いたのもいつだったか。今更あいつに正直な気持ちを伝えようとしたところで、ふざけているとしか思われないのが関の山。

また一つため息をついて目の前の真っ白な便箋に目を向ける。
言葉にしたってどうせ冗談の一つとして捉えられてしまう。だから手紙にして伝えようかと思い立ったはいいが、どうしても言葉が浮かばない。
どうすれば今の気持ちが伝わるんだろうか。飾り気のある言葉ばかりを選んで書いては消していたが、それでは余計に伝わらないことになんとなく気付いた。
だから最終的に真っ白な紙に殴り書くように「好きだ!」とシンプルに真っ黒な三文字を記してみた。
けれどこれを渡しても、受け取られた瞬間読まずに捨てられてしまうだろうか。

「……ばか。」届かない気持ちと共にちいさく吐かれた言葉は、くしゃくしゃの手紙と共にどこかへ捨てたのだ。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ