時空の魔女
□いつもの日常
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1.いつもの日常
声が、聞こえる。
……まって……
だれ、なの?
……必ず……から……
わからない…
……いつか……会いに……だから
『待っていてくれ』
女が目が覚めて最初に見たものは、見慣れてきた天井であった。
まだぼんやりとした頭を起こすようにベッドから上体を起こした。
ふと見た壁掛け時計は5時27分を指している。
肩にかかる位の長さの髪の毛は寝癖でボサボサである。
……今からもう一度寝ても寝坊しそうだから、起きて準備しようかな。
そう思うと女は軽く伸びをした後ベッドから降りた。
身仕度を整え部屋から出てきた時には、女は黒を基調とした修道着に身を包んでいた。
修道服の黒に色素の薄い金色の髪と濃い緑のヒスイの首飾りが目立つ。
彼女の名前はウィア。数ヵ月前からこのフィーニス大聖堂に住み込みで働いている。
聖堂にいる大半の人は、魔導師見習いの術士として修業をしながら寮生活をしているが、ウィアは修道女として働きながら聖堂で暮らしている。
朝食を食べるために食堂へと向かって歩いているのだが、気のせいか皆忙しそうにしている。
「おはよう、ウィア」
すれ違い様に挨拶を交わす人たちもそそくさと足早に去ってゆく。
……そういえば、最近なんだか聖堂内が慌ただしい気がする。
ウィアはここ二、三日の周りの雰囲気を思い出しながら食堂の扉を開けた。