電脳獣

□HEARTBLADE17
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ドアも。
カーテンも。
ベットも。
床も。
天井も。
全てが真っ白い病室。
ただその中で、俺の髪とタイキの手から流れる命の証だけが赤くて。

赤。
朱。
緋。
赭。
紅。

シーツを。
床を。
赤く染める。
タイキの命が、俺の手から簡単にこぼれ落ちていく。

なんで?
今、何があった?
タイキは、俺は、今ーー何をした?

『だい、じょうぶ』
『……………』
『おれは、だいじょうぶ』

だから。
だから、何だって言うんだろうか。
手の甲から血を流して。
顔は青白くて。
何が、大丈夫?

『タイキ…』

がっちゃん。
俺の手から、今だに煙をあげるライフルが落ちた。


【キズナがもっと大きくなって、守りたいと思える人が出来た時。コレをキズナに託すよ】


結局。
貰えなかったライフル。
父さんの、形見になってしまったライフル。
………そうだ。
俺が、撃ったんだ。


・・・・・・・
このライフルで。


・・・・・・・・
タイキの手の甲を。


・・・・・
撃ち貫いたーー!

『あっ…』

出そうとした言葉は、音にはならなかった。
なんて、言うつもりだったんだろうか。


ゴメン?


大丈夫?


痛い?


苦しい?


・・・・
それともーー?

『あ、っ、くぅ…!』

じわり。
視界が霞む。
それを我慢するために唇を噛む。
強く。
強く。
考えろ。
泣いてる場合じゃない。



『キズナ』



この声、は…。
違う。
タイキじゃない。

『キズナ』
『かあ、さん…?』

白い病室も。
タイキも。
血も。
全て消えていて。
ここは…ヒストリーゾーン、か?

『キズナ』
『母さん、どうし…』
『貴方は、生き…て…』

母さんの体が傾いて。
・・・
ヌルリ。
俺の手から赤が落ちていく。
なんで。
これはーー。
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