電脳獣

□HEARTBLADE18
4ページ/4ページ

「っつ……!」

あぁ。
頭が痛い。
なんで、雨も降ってないのにノイズが走るんだ。
ワケがわからない。

「ーーーー!?」
「ーーーーーー!?」

クダモンとエンシェントマーメイモンが何か言ってる。
けれど、その声は俺には届かない。
ノイズが邪魔をする。

「忘れなさい」

ロトスモンの声だけが、異様に響く。

「貴方が望むなら、私はなんだってしてあげる。だから、ね?」

だから。
だからなんだって言うんだろう。

「貴方は確かに橙色と青色の意志を継ぐ銀色。けれど…」

彼らがこの場所にいた奇跡ーー彼らが歩んだ軌跡を、貴方が歩む必要はない。
諭すように。
愛おしむように。
ロトスモンが言う。
あぁ、くそったれ。





「ナメるなぁ!!」





意図的に。
自分に言い聞かせるように叫ぶ。
ノイズに掻き消されないように。
ここにいないアイツに聞こえるように。

「そりゃあな、忘れたら楽だろうよ!実際何度も俺は忘れたいと思ったよ!!」

大丈夫だと。
そう言って笑うアイツの笑顔が堪えられなくて。
そんな結果を招いた自分の弱い心が許せなくて。
忘れたいと。
忘れられたらどんなに良いだろうと。
確かに思った。
けれどーー

「それは…結局ただの現実逃避だろ?」

何が嘘で。
何が本当か。
俺にはわからない。
でも。



【キズナ!】



アイツと俺の関係。
それは。
それだけは。
俺の中でただ一つ、紛れも無い真実で。

「キズナ。貴方は、夢から醒める道を選ぶの?」
「夢は醒めるものだろ」
「………そう、ね」

けど。
それでも。
私は貴方に、幸せな夢を見せていてあげたかったの。
ロトスモンは、そう言ってどこか寂しそうに笑った。

「ろ…」
「これは私の我が儘。だから、今度は私が貴方の我が儘を聞いてあげる」

ひゅん。
ロトスモンの持っていた杖が、空を切った。
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ