電脳獣
□HEARTBLADE21
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「なら聞くが」
少し。
それこそキリハらしくもなく迷うようなそぶりを見せた後に、キリハは口を開く。
「キズナ・カーマイン。お前は一体何者だ?」
「…………」
「偽名だろ、その名前」
「…あー…」
そー来たか。
もうちょっと緩やかなカーブで来るかと思ってたんだけどーーまさかの直球ストレートの剛速球ですか。
ビックリだな。
「…別に…偽名っていうわけじゃねぇよ。ーー本名でもねぇけど」
ちょっと。
言い訳じみたような言葉が口から出る。
「どういうことだ?」
「どうしたもこうしたもねーよ。でもそうだな」
確かに、そうだ。
「俺はタイキを“そう”呼んだ事はねぇし、タイキも俺に“そう”接する事はなかったし。わかんねぇのも別に無理はねぇけどーー」
そもそも、俺が偽名(厳密に言えば少し違うんだけど)だなんて普通は気づかないハズなんだけどな。
「……俺、ハーフでさ」
「は?」
「まぁ、聞けって」
少しくらいいいだろ。
「父さんがイギリス人で母さんが日本人。で、カーマインは父さんの方の姓なんだよ。だから別に、キズナ・カーマインが俺の本名ってのは本当……だったんだよ。五年くらい前までは」
キリハが目を見開く。
コイツは聡いから。
もしかしたら“その奥の意味”に気づいたのかもしれない。
「今の俺の本名は……キズナ。
工藤 キズナ。タイキのーーそうだな。日本語で言うなら“ようしえんぐみ”の義兄弟ってやつかな」
強さでしか哀しみは癒せない、そう言ったのはキリハだ。
キリハ自身、思う所があるのかもしれない。
銀色のクロスローダーは……俺の言葉に何にも反応を示さなかった。
中にはいる。
だからきっと…コイツ等もキリハと同じ。
「……どいつもこいつも、過去に縛られすぎなんだよ」
もちろん、俺も。