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□インターバル(1)
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真っ暗い深夜の公園で、あたしはまったくついてないなとため息を吐く。

たった今、彼氏だと思っていた男と別れてきたところだ。
どうやらあいつは、あたしの彼氏ではなかったらしい。

あいつにとってあたしはちょっと遊ぶのに都合の良い女で、彼女なんて身分じゃあなかった。
その証拠に、鉢合わせたあいつの彼女だという女に、ハンドバッグで酷く殴られ、その後彼氏だと思っていた男に邪魔だからもう消えてと言われ、半ば茫然自失として歩いて気が付いたらこの公園にいた。

何それ笑っちゃう。
つまり、セフレだった訳か。

成る程確かに、思い出してみればカップルらしいことなんてしたことない。
そんなことにも気付かなかったなんて、あたしはどれだけのぼせていたんだろう。

のぼせる程格好良かっただろうかと、彼氏、もといセフレの男の顔を思い出してみようと頑張ったけど、殴られた痛みが今更やってきて集中出来ない。

…いいや、別にそんなんどうだって。

それより問題はこの顔だ。
明日も普通に学校なのに、腫れた顔面じゃあ注目の的になるに決まってる。

何もかもが憂鬱だ。
あーあ、本当についてない。

あたしの平々凡々だったあの日常は、どうやら家出しちゃったみたい。

今から家に帰るのも面倒だと思ってベンチに仰向けになると、公園の入り口で何かが光るのがチラリと見えた。

何だろ。
ホームレスかな。それとも酔っ払って盛ってる若人かな。
どっちも嫌だけど。

いずれにしても、殴られてきっと痣だらけになったであろうあたしの顔を見れば、変な気は起こさずにいてくれるだろう。
入り口に背を向けるようにして寝返りを打つ。

自暴自棄ってやつだろう。
家に帰ろうなんて気は消え失せていた。

しばらく無音の後、あたしは自分が何かに照らされていることに気が付いた。
懐中電灯?
肝試しに来た人達かな。今あたしの顔見たら、きっと心臓止まるぞ。

なんて、現実を無視した半分妄想に近いことを考えていたら、砂を踏む重い足音が背を向けたあたしに段々と近付いてきた。

…いいよ、見たけりゃ見なよ。うんと驚かしてやる。

足音が止まる頃合いを見計らって、あたしは芝居っ気たっぷりに振り向いた。

でも、そこに立っていたのはホームレスでも酔っ払いでも肝試しに来た人でもなく、

「君、どう見ても未成年だよね。ここで何してるの」

懐中電灯の光が届いてないから顔は見えないけれど、声から察するには若い男の人。

そう、振り返った先に立っていたのは、懐中電灯をあたしの少し下に向けて照らしている、お巡りさんだった。




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