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□インターバル(3)
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孫の家に行くのだが場所がわからない、と交番を尋ねてきたおばあさんに道順を教えていると、後ろから聞き覚えのあるようなないような声がした。
振り替えると、ここからはだいぶ離れた場所にある、だけど有名な学校の制服を来た女が一人、立っていた。
「やっほ」
軽く手を上げた佐々木要を無視して、道順の続きを説明する。
「公園まで行けば、すぐ裏ですから」
そう締めくくった俺を見て、おばあさんはとても丁寧にお礼を言う。
いやそんな、自分は自分の役目を果たしただけですから。
去っていく後ろ姿を見送って、交番の中に戻る。
黙って成り行きを見ていた佐々木要も、当然といった様子でついてきた。
「お前、また迷子にでもなったのか」
机から椅子をひきながら聞くと、佐々木要も違うし、と答えながら、スツール椅子を引っ張って座った。
「何しに来たんだよ」
うんざりしながら更に問い掛ける。
佐々木要は特に何も感じることはない、といった表情で黙っている。
ふと、気付いた。
初めて見た時には青黒い痣が、その次に見た時には白いガーゼだか湿布だかが貼られていた彼女の頬に、今は何もない。
よく目を凝らせばうっすら黄色味を帯びているから、まだ完全に治った訳ではないんだろう。
「それ」
「は?」
左の頬、と言うと、佐々木要は軽く手をあてる。
「だいぶ良くなったんだ」
「うん。もう四日経つしね」
最初に会ったのが木曜日、白いのを張ってあったのが金曜日、土日は会わなかったから、成る程確かに四日だ。
「よかったじゃん」
「うん」
頷いた佐々木要を見て、机に視線を戻して、改めて質問あるいは詰問した。
「何しに来たんだよ」
「あえて言うなら職業見学」
「そういうのは俺個人じゃなくて教師や学校を通して警察署と相談しろ」
「やだなぁ」
椅子の足が床とすれる軽い音がする。
佐々木要が体を揺らしでもしたんだろう。
「あたしは警察の仕事じゃなくて七瀬の仕事に興味があるんだよ」
「呼び捨てにすんな」
佐々木要は一瞬黙った後、突っ込むのそっちかよ、と笑いだした。
女がそっちかよとか言うなよ。
「あたしのことも佐々木で良いからさ、七瀬って呼ばしてよ」
さん付けとかよそよそしくて嫌なんだよね。
「よそよそしいってか、そもそも他人」
そう言ってやると、佐々木要はまた笑いだした。
「お巡りさんがそんなこと言っちゃいけないよ」
「本当のことだろ」
「まさか」
それから佐々木要はちょっと考えた後に、あたしらもう友達じゃん、と締めくくった。