mini2

□初夏
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 ひまわりを摘んだ。両手にいっぱい。今日は快晴で、初夏の日差しが眩しい。ドアが開くたびに遠くで聞こえるセミの声に耳を澄ませる。

 もうすぐ、夏が来る。

 車両には僕しか居ない。両手いっぱいにひまわりを抱えて、電車に揺られる。目的の駅は最終駅だ。

 車窓から白い花畑が見える。

 たどり着いた最終駅、裸足の足に、ホームのアスファルトが熱い。駅を出てむき出しの土の道に出て、土の冷ややかさに安堵する。

 ここから、少し歩いたところに目的地がある。

 好きな歌を小さな声で口ずさみながら、ひとり歩く。遠くに紙飛行機が見えた。どこから飛んで来たのだろう。

 誰も悪くない、ただ運が悪かっただけだ。

 両手に抱えたひまわりがしおれない内に。

 眼下には海が広がる。潮の匂い、波の音。目的地が近付いてくる。

 時期にはまだ早いけれど、ちらほらと花が見られる。誰か、気の早い人が来たのだろう。

 目的地には先客がいた。両手いっぱいに白い花を抱えた君が、僕に背を向けて立っている。

 「やあ」

 聞こえない僕の声に君は振り向かず、ただただ立ち尽くしている。初夏の日差しに、君の白いワンピースが眩しい。

 「ありがとう」

 僕は足元にひまわりを置いて。彼女にそう声をかける。

 小さく震えるその肩に触ることは叶わず、僕は空を見上げる。きっと泣いているであろう君の顔を見ることも叶わない。

 「また、会いに来てよ」

 そう言った僕の声に応えるように君が振り向く。そして、ひまわりを見付ける。
 涙でぐしゃぐしゃの顔を、笑みで更にぐしゃぐしゃにして、君は言う。

 「また、会いに来るよ」

 初夏の風、空気、匂いの中、僕は君を見送る。君の足は前へ進む。僕の目は海を見つめている。

 君は僕の好きだった歌を口ずさむ。サヨナラではなく、またねと笑う。

 遠くで紙飛行機が飛んでいる。





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