短編
□寂しい顔を見せるのは
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『暇だなぁ〜』
ぽけーっと天井を見て思う
休みの日は決まってここに居る様な気がするなぁ
「あのなぁ、いくら暇だからって毎週来るなよ」
『良いじゃん。留だって暇でしょ?毎週いつ来ても部屋に居るじゃん』
「ったく。そういう事を言いたいんじゃない。お前には不破が居るだろ?」
『雷蔵?何で雷蔵が出てくるの』
「一応お前の彼氏だろ。それなのに毎週俺の所に来て何も言われないのか?てか夕方ならまだしも、夜に来るのはマズいだろ」
『う〜ん・・・言ってる様な・・・・それに留なら朝でも夜でも危なくないって思うし・・・・』
「馬鹿かお前は(笑)あー…不破が可哀想になってきた」
『馬鹿とはなんだ留三郎っ!信頼してるから言ってるのに!』
「悪い悪い。冗談だよ。あははっ」
1年生の頃から、ずっと留とは仲が良くて
相談とかおふざけとか、こうゆうのが当たり前に出来る貴重な友達
此の雰囲気が大好きで、結局毎週留の部屋に遊びに来てる
それは不破雷蔵と付き合う様になった今でも変わってない
『あれ?伊作は?』
「アイツなら医務室で怪我人の手当中だ。・・で、不破は放っておいて良いのか?アイツだって休みは同じだぞ」
『・・・雷蔵は真面目だから。アンタと違って』
「そうか、確かに真面目・・・っておい!俺だって真面目にひたむきに6年間過ごして来ただろうが!!!」
『あ、あははははっ。ノリツッコミなんてどこで覚えたんですかっ』
「うるせえっ//いまのはついだ、つい。」
『くっ、くくっ・・・//あーダメだ面白いっ。ぷっ//』
「お前なぁ・・・おいっ」
『あはははっあー…・・・ん?』
留は、終止寝っころがり笑いっ放しの私の頭をそっと、本当にそっと撫でてきた
『・・・・・(あー…)』
「ばか。いい加減素直になれよ。寂しいとかそうゆう気持ちを俺にぶつけてどうする」
『・・・・・ばかは余計だ。』
「だーかーらー、素直になれって」
『…分かってる。いつも思ってるし、そうしなきゃって。それに・・・』
「それに?」
『・・・・・・雷蔵っ・・』
「?あ、不破っ!・・・あ!これは違うぞ?下心とか無いからなっ!」
部屋の戸が半分開いたままだったらしく、雷蔵が立ったままこちらを見ていた
留は慌てて私の頭から手を離し、あれやこれやと説明してる
「・・・・・・・」
『・・・雷蔵?(あちゃー…いい加減怒っちゃったかな)』
「おい不破、・・何とか言え、よ(こんな事が他の6年生に知れたら・・・震)」
「食満先輩、に、怒ってないですから。」
「そ、そそそそうか」
「了を連れて行っても良いですか?」
「良いも悪いも、お前の彼女だろ」
「ありがとうごさいます。行こう了」
『う、うん。留、じゃあまた』
とてつもなく重たい空気の中の会話は、息が詰まるっていうか、もう呼吸を忘れるね
「入って」
無言のまま雷蔵の後に付いて行って、雷蔵と三郎の部屋にお邪魔する
今日は三郎が居ないらしく、凄くゆったり出来る広さ
『・・・雷蔵、怒った?』
「怒らないとでも思った?僕だって男だよ。ヤキモチだって焼くし、少なくともど、独占欲だってあるんだから」
こんな時に申し訳ないけど、独占欲って言葉を吃っちゃうあたり相当可愛いと思った
『でも留は友達で・・』
「分かってる。了と食満先輩がずっと前から仲がいい事なんて、学園内で知らない人居ないもん。・・・・ただ…」
『ただ?』
「・・・先輩の前ではあんなに寂しそうな顔をするんだって思ったら、悔しい」
『雷蔵・・・』
「僕じゃダメ?了が寂しい時に気持ちをぶつける相手は、僕じゃダメなの?」
『ダメじゃない。ダメだなんて思った事、一度も無い』
「じゃあ何で…」
『・・・・・はははは恥ずかしいんだよばか//』
・・拗ねた顔でそんなことを言うの。この人本当に年上かな
でもどうしよう、恥ずかしいなんてすっごく嬉しいや
「彼氏なのに?」
『彼氏だから//』
「好きなのに?」
『好きだから//』
「お願いしたら来てくれる?」
『そりゃあお願いされたら・・・って//何言わすんだよ〜』
「ごめん(笑)。・・・はぁ〜良かった。ちゃんと理由が分かって」
『・・・そんなに気にしてたの?』
「当たり前でしょ!了は僕の大事な大切な彼女さんなんだよ!?・・・毎週毎週休みになると先輩に会いに行ってさ、好きなんじゃないかって思って・・怖かったんだから」
『・・ごめん』
「ね、了こっち来て」
そう言えば本当に恥ずかしそうに寄ってきてくれる
好きで好きで、愛おしくて仕様がないのは僕だけじゃなかったんだって、今は心が温かい
『らいぞー・・・//』
「・・ふふ。はい」
僕に向かって両手を一杯に広げ、早くと急かす
嬉しくてドキドキして・・・って僕女の子なのかな(笑)
『あー…久しぶりだぁ//雷蔵に抱き締めてもらうの』
「僕も久しぶり。・・・・・嬉しい?」
『うん。嬉しい//』
「好き?」
『・・うん。大好き//』
そっと頭を撫でると、先輩に見せた寂しそうな顔じゃなくとても幸せそうな顔
『まだ怒ってる?』
「怒ってないよ。」
『そっか・・・・・ねぇ、留の所、もう行っちゃダメなの?』
「・・・・・どうせ止めたって行くんでしょ。そのくらいお見通し。・・でもさ、なんでそんなに先輩にこだわるの?」
『こだわってる気はないんだけど・・、何て言うんだろう。あの雰囲気が好きなんだ』
「雰囲気ねぇ・・・」
『男も女も関係無いぜ!みたいな』
「関係あるじゃん!さっき了の頭撫でてた時の食満先輩、今まで見た事無いくらい優しい顔してたよ!?」
『え?留っていつもああゆう顔じゃなかったっけ・・・?』
「・・了〜っ・・・。はぁ〜もぅ。気をつけてよね。了は可愛いんだから」
『可愛くないっ///やめてよ恥ずかしいっ!』
可愛い。本当の事だもん可愛いんだから
それに照れてるのは嬉しいから良いんだけど、先輩の話を聞いてちょっとイラッとしたから・・・
『・・雷蔵//どうしましたの?』
「・・・・・・・っ//」
『・・あ、あれ?不破さん?//』
「///////」
『顔真っ赤だけど。そんなに恥ずかしいなら無理しなくても//あははっ///』
「・・・も〜っ・・・///」
凄く思い切ったんだな。勇気出しましたね雷蔵さん//
今の状況は、抱き締め合ってた体制から、そのまま倒れて雷蔵が私の上に覆い被さっていますですはい
「・・了//」
『ん?//』
名前を呼んで、少し頭を撫でて、ゆっくりとキスをした
「大好きだよ了//こうやって独り占め出来るの、僕って幸せ者〜///(ギューっ)」
『そんな真っ赤な顔で言われても・・・笑』
「良いの。本当の事『ちゅっ』・・・///」
『へへ〜ん!』
一生懸命に見えたから、なんかつい雷蔵の唇をちゅって吸ってみた
「・・・・こんな時ばっかり年上になるんだから//」
『まだまだだねぇ雷蔵!』
「・・・馬k『・・・』っ//」
今度は下から雷蔵を引き寄せて、しっかりと口付けをする
「・・・・・っ//」
『・・んっ・・・・はぁ・・』
舌を絡ませる長い口付け
初めはビクビクしてた雷蔵だったが、今は私を支えて耳を触る余裕さえある
『・・・ん〜っ///・・・・・らい・・ぞっ』
「ん//?」
『・・・はぁ・・っん・・い、息////』
「あ!ごごごめんねっ」
やっぱり男の子は、こうゆう方が好きなのかな/////
オドオドしてたくせにやっと離してくれた愛しい彼の顔は、どこか満足そう
『・・・はぁ〜//・・こっちのが好き?』
「え、え//?あ、うん////」
『そっか。やって良かった//笑』
なんだか恥ずかしさやら満足感やら、良く分からなくなっちゃって2人で笑ってて
するとボーンッとヘムヘムの金の音が響いた
『あ、もうこんな時間か//。そろそろ戻らなきゃ・・・』
「え。今日三郎居ないよ?それに明日も休みだし、泊まって行きなよ//」
『良いの?っていうかなんで三郎は居ないの?』
「学園長に手紙の配達を頼まれて。ほら、今日お昼過ぎてから凄い雨が降ったでしょ?それで足止め食らっちゃったみたいなんだ」
『なるほどね。よし。三郎の布団借りよっと!』
「・・・え」
『冗談冗談(笑)一緒に寝よ』
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『っていう感じで、舌入れてちゅーまでした訳だしその後の展開は話さなくても分かるでしょ?』
「まぁ分かるけど・・・俺に一部始終を話してどうする」
『いや、留に感謝しなきゃって思ってさ!』
「はいはい(笑)」
「あ、了!また先輩と一緒に居るっ」
『あ、雷蔵♪』
「♪ってお前なぁ・・・」
「先輩、間違っても手ぇ出さないで下さいよ?」
「分かってるわ!」
『で、何か用?雷蔵』
「あ!そうだった!さっきシナ先生が呼んでたよ。職員室に今日使う資料を取りに来いって」
『そっか。じゃあ私行くね!雷蔵また後で!留、また明日ぁ!』
「だからお前なぁ・・・汗」
「うん。また後でね」
「・・・・・不破、俺と了が一緒に居て怒らないのか?」
「もう怒りませんよ。そりゃあちょっと悔しいけど、僕も大人にならなきゃ」
大人に、ねぇ・・・
まぁアイツが心底惚れて、支えにまでしてる時点で相当大人だって事だと思うがな
走っている了の後ろ姿を見て微笑む先輩の顔は、やっぱり後輩が怖がるいつもの表情とは違う
でも良いんだ。僕の大事な大切な彼女は、武闘派の先輩ですらこんな顔にさせちゃう凄い人なんだから
寂しい顔を見せるのは
「あ、先輩。でもいくら了が寂しがってるからって、もう抱き締めたりしないでくださいね」
「・・・・・はい・・(アイツ余計な事まで喋りやがって・・・汗)」
→あとがき