してん

□愛色の妖精
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俺は自分が大嫌いや。他人に関心が持てない俺も、イライラするとすぐに物にあたる俺も、上辺だけの付き合いしかできん俺も、素直になれん俺も、人の顔色なんかおかまいなしな俺も、自分主義な俺も、面倒なことから目を背ける俺も、全てのことを諦めとる俺も、全部全部、大嫌いや。ただ、そないな俺の傍におってくれる人が最近できた。



「ユウジ先輩、俺を見てにやにやせんでください」

「いやあ、今日もかっこかわええな、好きやで!!」

「部室でそういうこと言わんでください」

「もー、恥ずかしいんかぁこいつめ!ツンデレか!!」

「……刺してええですか?」

「や、あの、フォークは勘弁して下さい、痛いから、刺さると痛いから、な?」



俺がにっこり笑えば、先輩は顔を青くしながら目の前の弁当に手をつけた。休日の練習の昼飯の時、先輩は必ず俺の隣に座る。そして俺を好きやと言う。今こそこうやってふつうに会話するが、2週間くらい前まで、俺は先輩と話したことが無かった。2週間くらい前に俺がレギュラーに抜擢されて、そこから話す機会がどんどん増えた。明るくて、おもろい人やってことは、入学式ん時に知っとったけど。一番最初に話したきっかけはよく覚えてへんけど、先輩がいきなり俺に告白してきたんや。



「俺、財前のこと好きなんや」




嬉しかったけど、それと同時にどうして、と思った。俺は俺が大嫌いや、取り柄なんて何もない、確かに運動や勉強は出来るけど、そこらへんに居るやつと変わりない。いつからか世間を冷めた目でしか見れんくなって、そないな俺が大嫌いで。どうして先輩が俺を好きやと言うんか、俺には理解できんかった。





「財前?ぼーっとしてどないしたん?」

「あ、……いえ、いろいろ考え事を」

「まあぼーとしとる財前もかっこええけどな!」

「……先輩は、」

「ん?」

「先輩は俺のどこが好きなんですか?」



こないな"俺"の、いったいどこが、




「全部」



先輩はそう即答して、俺は小さくため息を吐いた。



「財前って自分嫌いやろ?」



先輩にそう言い当てられて、顔には出さんかったけど驚いた。



「見とればわかるんや、猫かぶっとるときとか、俺が好きやでって言うたときとか、告白されたときとか、いっつも一瞬やけど、悲しそうに笑うんや」

「そないなこと、」

「でもなー、俺財前が大好きなんや、世界一、誰よりも、財前の全部がだーい好きなん!!」

「あの、ここ部室」

「やから財前も少しくらい自分好きになってええと思うで?自分を好きになってやっと他人を好きになれるらしいから、早う自分を好きになって、次に俺を好きになりや」



先輩は笑うと、席を立って小春先輩のところに行ってしまった。



「ユウジ先輩っ、」




先輩が俺の声に振り向いた。






「もうとっくに、あんたが好きです」



愛色の妖精

(先輩が好きになってくれた俺くらい、少しは好きになれるかもしれん)


リクエストありがとうございました^^syawa様!お久しぶりです。こんな感じで大丈夫でしょうか?設定などの指定がなかったので大好きな切甘系で書かせていただきました…。書き直しは何度でもさせていただきますので!お互いにサイト運営頑張りましょうね。ありがとうございました!
お持ち帰りはsyawa様のみ。



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