カメリア

□2
1ページ/1ページ



力強い七色の光を放つ、大きなポケモン。
その傍に佇む一人の女。

透き通る青の瞳は、まるで水のようで。

隣の炎とは相反した存在。だからだろうか、異様に目をとられるのは





I make a living by me







無事退院したあたしに待っていたのは、レッドが再戦を断ったという知らせだった。

病室で彼が言った言葉は、正直信じられない。
彼がなぜそうおもうのかは分からない。

大きなため息を吐く。
体調管理にもっと力を入れよう。倒れるなんてチャンピオンとしてどうなのあたし。

ゴロゴロと喉を鳴らす結月の頭を撫でながらの自暴自棄。
不満げに見つめる結月には悪いが、なんだかすごく落ち着かない。

「……馬鹿らしい」

本当に、何を悩んでいるんだか。あたしらしくない。

明日からまたリーグでの仕事が待っている。悩んで終わる休日にはしたくない。
立ち上がり、玄関へと向かう。
軽快な足取りでついてきた結月は、迷わず定位置の肩に乗る。

目と目が合う。準備完了のサイン。

違う種族、言葉は通じない。でも、考えていることは分かる。気持ちも伝わる。
それは結月がエスパータイプだからじゃなく、イーブイの時から一緒だから。

不思議だといつでも思ってる。

長い年月を一緒にいれば、こんなにも親密な関係になる。
結月だけじゃない。焔も勇李も美澄も同じ。

あたし達とは全然違う繋がり方を、あたしはこの子達としている。

天気がいい。強い日差しのなか、手で日陰を作って視界を守る。
穏やかな日々。当たり前の日々が、凄く嬉しい。

ずっとこうしていたい。何もかもを投げ出して、逃げてしまおうか。

「……」

ふと、感じる視線に目を細める。
気が付いた結月が低く唸りだす。彼女が唸ったのは、相手から戦意を読み取ったから。

「誰?悪いけど、今日はオフなの」

「……オフ、ね。随分とまあ人間臭くなったなヤタナ」

表れたのは青年。
馬鹿にしたように笑い、その赤い目であたしを見た。









●●

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ