カナリア

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レッドに宣戦布告してからはや5日
あれから特に変わった事もなく、いつものように、書類の山と、四天王に勝ち抜いてきたチャレンジャー(主にゴールドとシルバーだが、たまにコトネちゃんやヒビキ君もくる)と闘っている

レッドが、あたしの挑戦を受けてくれたかはまだわからない。でもきっと彼は来てくれるはずだ
そんな気がする
根拠のない確信が胸を躍らせた
レッドはどれだけ強くなって此処に来るだろうか。どんなに楽しいバトルになるのだろう。このフィールドは頑丈に作られているから、好きなだけ暴れられる。早く戦いたい。
遠足に行く前の子供の様な気分で、毎日を過ごしていた

この間なんか、楽しみのあまり、最近メキメキと腕を上達させてきているゴールドに結月の本気の一撃をお見舞いした。
当然、兄さんにはやり過ぎだと怒られ、壊れた壁は給料から引かれてしまった。そのせいで、今月は実質的に無賃金だ。

当然ただ働きだとやる気なんか出るはずもない。ジムリーダー達と行う月に1度の会議も、グダグダと行えば、当然怒られ、チャンピオンたる者うんぬんを長々と話された。それを左へと流しながら、頭の中はレッドとのバトルでいっぱいで。
自然と口角が上がり、怒られた。

「給料が無くて、頭おかしくなったか?」

怒鳴られるだけの会議が終わると、グリーンが笑いながらそう言ってきた。本当に失礼な奴だ。
“親しき者にも礼儀あり”。教育のために、華麗な回し蹴りをお見舞いしてやる。ざまあみろ。

「金は好きだけど、無いから頭がおかしくなるほどじゃないよ」

「……」

そう言い放つが、返事は無い。
うずくまり、腹部を守るように転がるグリーンは動かなくて、少し不安に思う。
慌てて彼の手を取り、脈を確かめる。
どくんどくん、と動きを感じ、安堵した。大丈夫、生きている。……正直殺ったかと思った。

「……まあ、蹴りで死ぬなんか聞いたことないし、大丈夫だよ。うん」

「おま、え…は、っ少し…てかげ、ん」

「え?なんて?」

立ち上がる様子が見られないグリーンに、付き合っている時間は無い。バイビー、とさよならの挨拶をすれば、まだ何か言いたげだ。
気にせずにその場を立ち去る。結月の目線が痛い。

多少すっきりしたあたしは、レッド戦の戦略を練り直しながら、足を進めた。












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