カナリア

□18.5
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両親が事故で亡くなった。
急に1人になったあたしを引き取る親戚の人達の、あの思っていることを映し出している瞳が嫌いで、目を見ることを避けて、ずっと下をむいていた。
暗い世界で生きていた。

ある日、親戚でもない家族が、あたしを引き取ってくれた。
1人息子が旅に出て寂しいから、と頭を撫でてくれた。
下ばかり向いているあたしの頬を包み込み、顔を持ち上げて、それじゃあ気分も沈んじゃうでしょうと、微笑んでくれた。

その日から、あたしの世界は明るくなった。

自身の子供と同じように接してくれた、優しい暖かい両親と他人のあたしを受け入れてくれた兄。

毎日が楽しかった。
旅に出ていた兄さんが帰ってくる日は、もっと楽しくなった。
毎回お土産をくれて、いろんな話をしてくれて。

外の世界に興味をもって、ポケモンに興味をもった。

その年の誕生日プレゼントは、茶色い、ふかふかした胸毛を持つ可愛い可愛いポケモン。

なかなか懐いてくれないその子との接し方を、両親と一緒に考えた。
初めてバトルに勝った時は、あたしよりも喜んでくれた。

進化したイーブイが、シャワーズでもサンダースでもブースターでもない、薄い紫の体毛を持つ綺麗なポケモンになった時、病気にかかったのかと大声で泣くあたしに、大丈夫だと笑いながら慰めてくれた人達。

やがて実の両親の顔も声も、何もかもが、今の両親に上書きされた。
我ながら薄情な奴だと思う。

旅に出ることを相談すると、快く賛成してくれて、両親は空のボールを4個とウインディが入っているボール1つをくれた。

旅先で、あなたを守る子だと言って、笑って見送ってくれた。

沢山のものを貰った。感謝してもしきれないほど感謝している。

「お母さん、お父さん、来たよー」

静かに佇む2つの墓石に向かって言うが、当然帰ってくる言葉は無い。

不慮の事故で亡くなった両親。
もし生きていたら、兄さんに初めて勝ってチャンピオンになったことや新しい手持ちの子を見せたかった。

「兄さんは、今日はイブキ姉さんのとこに出張で明日来るからね」

墓石の上に乗る枯葉を取りながら、最近の報告をする。
幼馴染との再会や宣戦布告したこと。トリミングが上手くなったこと。

最近挑戦者が少ないんだよー、などと愚痴をこぼしたりもする。
返ってこない答えに寂しさを感じながら、花を添える。

毎年この日はいい天気になる。
風で揺れる葉の音を聞きながら、晴天の空を見上げる。

「……お母さん、お父さん。レッドに勝てたら、報告にくるね。待ってて」

墓石に手をあてて、宣言する。

頭にぬくもりを感じたのはきっと、気のせいじゃない。













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