番外編

□真夜中の公園
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「とろとろオムライスと、おろしそハンバーグを単品で。エビピラフと、メロンソーダを1つ。あとは、モンブランパフェとイチゴパフェと抹茶パフェ、ガトーショコラとシフォンケーキと……」

「デミグラスハンバーグのライスセット。あと、ポケモンフード一つ。以上で頼む」

「か、かしこまりました」

時刻は5時半。人のいない時間のため、夕飯を食べるには早いが、あたしとグリーンはファミレスに来ていた。
本日の報酬だ。グリーンのおごりということで大目に注文するが、途中で遮られる。

待ち時間には店長からの要望で、2人してサインを書いた。本人が名前を書いただけの紙に喜ぶ店長が去り、その数十分後、頼んだ品が順番にきた。

「いただきまーす」

雑談を加えながら、1つずつ平らげていき、あたしが食べ終わる頃、グリーンも食べ終わった。

「相変わらず食うの早いな」

「相変わらず食べるの遅いね」

ご馳走様の代わりにお互いがそう言った。
立ち上がり、グリーンが支払う。おしゃれにカードでだ。かっこつけてやがる。

ファミレスから出ると、辺りは暗くなっていた。さらに冷え込んで来たため、飛行はきつい。ここから家は遠くないから、歩いてかえることにした。
いらないと言ったが、グリーンは送ってくれた。
こういう些細な気遣いに、世の中の女は騙されるのだろう。だがあたしは違う。こいつがいかにバイビーなのかをしっているから。

他愛のない話をしながら、街灯で照らされる薄暗い道を、2人で歩いていく。
近道だからと公園を横切ろうと決め、ついでに遊んでいくか、なんて冗談に笑いながら、公園に入ったのが間違いだった。

「あ――――――――!お兄さん達、入ったねぇ!?」

「おいおいおいおい!人の敷地に勝手に入っちゃダメだよぉ!ママにならわなかったかぁ?」

「ここ、俺たちの縄張りなんだよ!!」

ぎゃははは、と耳障りな笑い声が響く。非常にうるさい。
カラフルなモヒカンやリーゼントや、スキンヘッドが1、2、3……ざっと見10人後半ぐらいか。俗に言う暴走族の人達が公園のブランコの近くに溜まっていた。

ああ、今日は何もかもツイていない。
というか、ここは公園だ。人の敷地もなにも公共の場だ。
お約束すぎる彼らを、変に尊敬しながら隣を見れば、グリーンも微妙な顔をしていた。

―――どうする?
―――どうするっていわれてもなぁ…

目だけでの会話。
こちらはまだ実質手を上げられていない。下手に動けばこちらが不利になる。さて、どうしたものか。
まあ、関わらないのが一番だろう。2人同時に踵を返そうと回れ右をする。が、後ろにも、仲間と思われる方々があたし達を囲んでいた。

「ここを通りたかったら、通行料いただくぜ!兄さん達よぉ!」

「払えなかったらわかってんだろうなぁ!あぁ゛!?」

「払えないなら女はおいていけよ!俺らで可愛がってやるからよぉ!」

「よかったなぁ姉ちゃん!いっぱい可愛がってやるよ!!」

なにがいいんだなにが。
じろじろと品定めするような目線達が気持ち悪い。
あろうことか、触ろうとしてきた手をバシンと叩く。思いっきり。

「さわらないで」

手をはじかれ、呆気にとられていた暴走族はすぐに怒りで顔を赤くした。
今度は拳を握りあたしに振りかざす。
だが、あと数センチで届く距離で、ぴたりとその拳が見えない壁のせいで止まった。
驚きを隠せない彼の顔を見ると自然と口角が上がる。

「グリーン、暴れる準備して。恐喝と暴力、それからセクハラの容疑よ」

「オーケー」

「結月、こいつ飛ばしな」

グリーンはボールからピジョットを出した。
指示どおり、暴走族の拳と体を飛ばし、戦闘態勢に入る結月に、族の1人が、あ!と声を出した。

「そのエーフィのニックネームにその顔…まさか、カントー・ジョウト地方のチャンピオンヤタナ!?」

「なんだって!?」

「じゃあ隣の奴は、トキワのジムリーダーか!?」

最初の威勢はどこへいったのやら。チャンピオン、ジムリーダーという言葉だけで、奴らの戦意は喪失したのがわかった。
一歩下がって、周りの仲間をそれぞれ見合う。ここでだれかが出てくれば、いっせいに他の奴もくることだろうが、誰一人動こうとしない。
このまま何事も無く終わらせよう。そう思い、少し警戒を解く。

「今すぐ全員この場から離れて。次から此処を溜まり場にしないっていうなら、今回は見逃す」

「―――嘗めてもらちゃぁ困るな。チャンピオンさんよ」

暴走族をかき分けて来たのは、明らかに違う雰囲気を醸し出す男だった。見た目や体格は他と何の違いも無い。その纏っている空気が違うだけ。おそらく、この人が彼らのボスだろう。

「うろたえるんじゃねえ!こっちは倍の人数いんだ‼負けるはずねえだろうが‼」

そう大声で叫ぶボス。そしてそのボスの言葉で再び暴走族達の眼には闘志が宿る。
随分と団結力がある族だ。だから非常にめんどくさい。

「7、8人ずつってのが妥当だな」

「こっち終わったら手伝おうか?」

「いらねえよ」

グリーンと背中を合わせて相手を見る。
全員のレベルはそこまで高くはない。これならすぐに済みそうだ。
マリルやドードーなど可愛い容姿のポケモンがいることに違和感を感じながら、結月に指示を出した。









真夜中の公園










甘い話になんかならない、

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