カメリア

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忘れてたんじゃない。
忘れたかったんだ。





Allow weak me in how






「懐かしい顔ねぇ、シュウ」

「覚えてたか。よかった、てっきり忘れられたかと思ってた」

緋色の瞳が嬉しそうに細められる。
笑っている彼とは対照的に、自分の眉間に皺が寄っているのがわかった。

やばい。凄く嫌な状況。
目の前にいるのがこの少年ーーーシュウでよかったと思うのと同時に、あの事をばらされたらという不安が頭をよぎる。

「随分と楽しそうに過ごしてんな。チャンピオン、だっけか?随分とまあ有名になったもんで」

「…まあね」

「俺に散々“目立つな”なんて偉そうに説教してたくせにな」

「あの時とは状況が違うわ。なに?今日は腹いせのために来たの?」

「随分と余裕なさそうだな。焦ってんのか?俺が、お前の“オトモダチ”になんか言うんじゃないかーとか思ってんのか?」

低く唸ったままの結月を落ち着かせる為、喉を軽く撫でてあげる。

大丈夫?
そんな顔をしながら見つめてくる彼女に笑いかけるべきなのだろうが、そんな余裕はない。

言葉を発しないあたしに、シュウの顔から笑みが消える。

「図星か。なんだかなぁ…今日の所は大人しく帰ろうかと思ってたんだけどヤメだヤメ」

彼の纏う空気がガラリと変わる。
肌に伝わる空気が冷たい。

「今のヤタナなら、俺だって勝てるだろうし。潰すなら今だよな」

「っ…!」

「来い、ルギア」

その言葉と共に、空から現れる白い大きなポケモン。

近くにいる人たちの悲鳴が聞こえる。
それもそうだろう。
一生に一度、お目にかかれるかどうかの伝説のポケモンが、いきなり現れたのだから。

このままだと近くの街に被害が及ぶ。

ーーーーーー勇李、人のいないところを探して!急いで!!

腰のボールがカタリと揺れる。
その隣のボールを取り、空へ投げる。

「焔、神速!」

すぐに形を成す焔の背に乗り、命じる。
勇李からの指示が既に来ているのだろう。一目散にその場所へと向かう。

空からの攻撃は交わすには大きすぎる。サイコキネシスでルギアの顎を動かし機動をずらす。

あたったらひとたまりもない。あたしもこの子達も。

緊張感が溢れるこの場に、鳴り響くポケベルの音。画面にはワタル兄さんの文字。

[ヤタナ!いったいどこほっつき歩いてる!緊急事態だ!すぐに現場に]

「兄さん、悪いんだけど現場には誰も向かわせないで!!あたしで対処するから!これ命令!ジムリーダー達は自分たちの担当してる街で待機!四天王及び実力者達はジムのない街に!」

[何言って…]

「邪魔なのよ!足でまといだわ!!」

[ちょっとヤタナ!!兄様になんて口を]

イブキ姉の言葉をぶち切る。

命令したけど無視してくるんだろうな。
みんな優しいから。
本当に…

「…迷惑ね」

すっと表情が消えるのがわかった。

別れの時間が刻一刻と迫ってくる。














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