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□意外な
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白を中心としたアンティーク調の洒落た店。回りを見ると、若い女性ばかり甘ったるい匂いが広がり、少し高めのざわめきが店内に満ちている。


何故俺はここいるのだろうか


目の前で平然とコーヒーを飲んでいる男を見ながら、ここに来るまでの経緯を振り返った。





俺はいつもと同じように竜の洞穴で修行をしていた。そこにたまたまゴールドがやって来て、久しぶりだからバトルをしていた。初めは軽いものだったがだんだんお互いがのってきた時、邪魔が入ったんだ。

「シルバー、ちょっと頼みたいことがあるんだけど…ってゴールド?来ていたのね」

フスベジムリーダーのイブキ。俺はここで修行をする代わりに、度々頼まれ事をされる。今回もそうなのだろう。急いでいるのか、時間を気にしていた。しかし、タイミングの悪い時に来た。

「………」
「あれ?イブキさん?こいつに何か用ですか?」

勝負の邪魔をされ、ゴールドはすっかり集中が切れていた。今不意打ちで攻撃したら勝てるだろうか。いや、無理だな。そんなことを考えながら話を聞く。

「ええ。実はね、今日アサギにあるラグナレクってお店、知ってるかしら?」
「あぁ、あの有名な」
「そうそう。私、そこのケーキを予約してるんだけど、急用が出来ちゃって、すぐに行かなきゃ行けないの。代わりに取ってきてくれないかしら?」
「………面倒。今回諦めて、また予約すればいいんじゃないのか」

たかがケーキぐらいでどうして勝負の邪魔をされなければいけないんだ

「お願い!そのケーキ、人気で予約も三ヶ月以上待たなきゃ行けないの。ケーキを奢ってあげるから!」
「………」
「いいですよ。」
「っゴールド?!」
「本当?じゃ、お願いね?お店で私の名前出せばいいから!」

そう言うなり本当に急ぎなのか、フスベジムリーダーは出ていった。俺はじろりとゴールドを睨む。しかし睨まれた本人は飄々として言った。

「ラグナレクって言ったらジョウトでも1,2を争う人気洋菓子店だぜ?普段でも予約なしには中々食べられないしな。それに俺、どっちかって言ったら和菓子派だけど、ラグナレクのケーキは好きなんだ。それをただで食べられるならお使いなんて安いもんだろ。」
「………」

何ともやるせない気分になったが、引き受けたからには仕方がない。俺は軽くため息をついてアサギに向かった。





そして今に至る。

「お待たせしました。ザッハトルテとミルフィーユです。」

運ばれてきたケーキをぼんやりと眺める。そんな俺とは反対に、ゴールドは綺麗にコーティングされたザッハトルテに手をつける。その様子を見ていると、ゴールドが不思議そうな顔をした。

「食べないのか?」
「………」

俺はケーキを食べたことがない。どんなものか知ってはいても、見たのは初めてだった。だから俺にとってケーキは未知なる物体だった。何も言えずだんまりとしていると、ゴールドが唐突に自分のケーキを一口分に切り、俺の口元に差し出した。

「毒も何も入ってねぇぜ?せめて一口でも食べなきゃ失礼だろ。」

そう言いながら口元に押し付けて来る。やめろチョコまみれになる。しかたがないと思い、俺はそのケーキを食べた。

「………」
「美味いだろ?」

こくりと頷くとゴールドは満足そうな顔をした。口の中では濃厚なチョコの味が広がる。正直すごく美味しい。もう一口と言われるままに食べる。なんだか周りがさっきよりも騒がしい気がするが何故だろう。気がつけばゴールドのケーキを全部食べていた。

「あ……」

何となく、ゴールドが進めてきたせいだが、全て食べてしまったことに罪悪感を感じた。顔に出ていたのか、ゴールドは笑って気にするなと言った。その顔は怒っていると言うより、むしろ嬉しそうだ。

「何で笑ってるんだ?」
「んー?まあ気にすんなって。ほら、ミルフィーユも食べろよ。」

そう言われると何も言えなくなる。ゴールドの笑みを不思議に思いながら、俺は黙々とケーキを食べ続けた。





その後俺はケーキに夢中になってしまい、店のメニューの半分以上を制覇した。ゴールドが会計の時にご愁傷様と呟いていた。いくらだったのかは聞けなかった。帰りに頼まれていたものを受けとった。中身は二種類のケーキが入っていた。ぱっと見何かのムースだろうか。

「そう言えばあの人なんでケーキなんか予約してたんだ?」

確か体重がだのと気にしてはいなかったか

「…イブキさんも一途だよな。わざわざ甘さ控えめなケーキを予約して…そこまであいつに魅力何かあるのか?」

ゴールドの言ってることはよくわからなかった。ゴールドは苦笑して別にわからなくても良いと言った。



俺がそれを理解するのはまだ当分先の話だ




end
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