鉛色の疾風
□序章
1ページ/1ページ
はるか昔…まだ地上に神がいた頃、広大な砂漠の中心にあった神の住む地『カリキュラ』。
砂漠だというのにそこには澄んだ冷たい水も涼しい風もあった。
いつの事だろうか、その地に一人の人間の男が辿り着いた。
砂漠を越えた先の国で起こっていた戦争の兵士として戦い、敗北し、敵軍から逃れるために砂漠へと飛び込んだその男。
彼は敵の目に触れる恐れのない、自らが身を置くための新しい土地を求めていた。
そんな彼にとって『カリキュラ』はまさに聖地のようなものだった。
彼はそこに住んでいた神に頼み込んだ。
「何年かだけでいい、この土地を貸して欲しい」と。
もちろん最初は反対された。
しかし男の熱心で切実な態度に、次第に神達の心は揺らいでいった。
結局神々は緊急会議を開き、3つの契約付きで貸すことを決めた。
その1・この地で生まれた者は、決してこの地からでないこと。
その2・800年後、必ずこの地を神に返すこと。
その3・必ず生きる目的を持つこと。
この契約と引き換えに、男は『カリキュラ』を手に入れた。
男は一度祖国に帰り、仲間の敗残兵やその家族を『カリキュラ』に移住させた。
やがてそこは小さいながらも賑やかで活気のある立派な国へと発展していった。
それから何百年か経った今、神との契約を覚えている者はほとんどいない。