鉛色の疾風
□消失と出会い♯2
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建物がすべて崩れている。
辺り一面瓦礫の山と化している。
…どういうことだよ…?
それだけではない。
さっきまであんなに賑やかだったのに、いまは人間どころから野良猫一匹見当たらない。
かといって瓦礫のなかに埋まっているわけでもないようだ。
これだけ建物が崩壊しているというのに、火事ひとつ起きていない。
鴉は得体の知れない恐怖を感じ、もう一度目を強く瞑った。
―ザリッ
「!!」
突然後ろから足音が聞こえ、鴉はバッと振り返る。
そこにいたのは…
「あ、はじめまして♪君が鴉かぁ。」
腰まである長い灰色の髪をひとつに縛り、大きな帽子を被った少年。
鴉より少し小さい。
「誰だ…?」
「けっこう有名なんだけどな、僕。『郵便屋の鳩』って聞いたことない?」
…鳩(はと)、聞いたことあるな。どんな大変な依頼でもあっという間に片付けて、そのくせほとんど金はとらないとかいう…
「てめぇが鳩か。…なんで俺の名前を知ってんだ。」
鴉が疑問に思うのも無理なかった。
なぜなら今は皆彼のことを『独眼鳥』と呼んでいる。
というのもアーニュは鴉が昔住んでいた辺りからは少し離れている。
そのため誰も独眼鳥の本名を知らないのはずなのだ。
鴉に聞かれ、鳩はニッと笑って答える。
「だって僕は郵便屋だからね。名前知らない人がいたら届けらんないじゃん。カリキュラに住んでる人の名前は全員知ってるよ。」
鳩の答えはあまり納得がいくものではなかったが、鴉は次の質問…一番知りたいことを聞くことにした。
「ここを…カリキュラをこんな風にしたのは…てめぇか?」
鳩は一瞬キョトンとした顔になる。
そして口の端をあげてニヤリと笑うと楽しそうな声で言ってきた。
「…もし『イエス』って答えたらどうする?」