鉛色の疾風

□消失と出会い♯4
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鳩が色々と気に入らない鴉。
だが憎いことに、なぜか消えてしまった町にいたのは自分と鳩だけだ。
なぜ町が消えてしまったのか鴉は知らない。

…鳩なら知ってっかもしれねぇな。

ただでさえ他人を信じようとしない、ましてや頼ったりなど絶対にしない鴉にとって、これだけ憎たらしい鳩に頼るような素振りを見せるのはとてつもなく悔しい。
が、場合が場合だということもあり仕方なく聞いてみた。

「オイ…なんで町が消えたか…テメェ、知ってるか?」
「ん?あ〜…鴉、知らないんだ?」
「るっせぇよ!」
「やっぱりね♪じゃあ…お願いしてよ。」
「は?」
「『どうしても教えてほしいです。鳩様、教えてください。』って、ちゃんと頭下げて言えたら教えてあげるよ♪」
「誰が言うかぁっ!」

…めちゃくちゃうぜぇっ!

調子に乗ったような態度の鳩に、鴉の怒りは募る一方だ。
しかし、鳩がなにか知っているのならなんとしても教えてほしい。

「あれ、言わないの?」
「いいから教えろ。投げんのは下手でも接近戦なら得意なんだよ。」

ナイフを出して、先端を鳩に向ける。
鳩は怯える様子もなく、楽しそうに笑っている。

「…そんなに教えてほしいの?だったら素直に言えばいいのになぁ。」
「早く言わねぇと本当に切っからな。」
「鴉、なんかかわいい。何ムキになってんのさ?」

怒りが爆発する。
ナイフをしっかりと握り、鳩に向かって切りかかる。

「しょうがないな、教えてあげるよ。」
「!!」

切る寸前だった手を慌てて止める。

「知ってるっていうか、僕の予想だけどね。カリキュラって神様から借りてた土地でしょ?だから借用期限が切れて神様が全部消しちゃったんじゃないかな。あるいは、僕と鴉以外にも誰かいてその誰かがやったとか。ま、確率は低いけどね。」

…誰か…か。

その時だった。

―ガラッ

「わぁっ!」

―ドシャァ

鴉の後ろで瓦礫が崩れる音がして、それに重なるように悲鳴が響く。
鴉と鳩の視線が一斉に音のした方へ向く。
そこには、ボサボサの明るい茶髪をした少年が倒れていた。

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