My micro ADVENTURE

□はじまり
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―…ーンコーンカーンコーン…

「りゅ〜うがっ!起きろ〜っ!」
「んあぁっ…。」

数学の授業(睡眠時間とも言う)が終わり、いつも通り親友の星満月が起こしてくれる。

星満月(ほしみづき)…。
しっかり者でクラスでも慕われている満月は、何を隠そう俺の彼女…と言うのは嘘だが、実は俺と同居している。
小さい頃から親がいない俺は、小学三年の時に俺と同じで親のいない満月と出会った。
それからというもの、中二の今もずっと一緒に暮らしている。

「なにボーッとしてんの?早く帰ろっ!スバル迎えにいこうよ!」

満月が小走りで先にいってしまうので、俺も慌てて追いかける。
着いたのは俺達の教室の二つ隣、2-4の教室。
満月は中を覗いて、もう一人の同居人である夜空スバル(よぞらすばる)を呼んだ。

「スバルーっ!…あれ、掃除当番?」
「あ、満月に竜雅さん!ごめんなさい、急いで終わらせるね!」

スバルは大人しくて優しい女子。
去年の梅雨頃、満月が拾って…いや、連れてきた。
今は満月とスバル、そして俺…天川竜雅(あまかわりゅうが)の三人暮らしだ。

「待たせちゃってごめんなさい、帰りましょう!」

いつも通り、三人で学校を出る。
他愛ない話をしながら、家に向かう。
大体20分くらい歩くと、小さな崖の上の家が見えてきた。
その崖の上の家こそが、俺達の住まいだ。
崖の上だからと言って、どこかのジ●リ作品みたいに人間の姿をした魚はいない。
が、それに勝るとも劣らないすごいものがいる。
それは…

「ミュッ、ミュゥン!」
「ただいまぁ、チャミ!」

チャミ。
パッと見た感じはウサギだが、その藤色の体には小さくて真っ白な羽がついている。
頭には小さな角。
尻尾は長くて、二又にわかれている。
その上コイツ、空から降ってきたんだから驚きだ。
少なくとも地球上の生物ではないだろうが、不思議と怖かったり不気味だったりする感じはない。
ましてや役所やなんかに差し出す気は全くない。
つまり、チャミは俺達のペットであり家族なんだ。

「よ〜しよし、ちゃんとお留守番できたね〜、えらいね〜!」

満月がチャミの頭を撫でてやる。
嬉しそうな甘えた声を出すチャミ。

「竜雅さん、いつものお願いしていいですか…?」
「あぁ、了解っ。」
「気を付けてくださいね、ほんとにあそこは危険ですから。」
「分かってるって。毎日やってんだからもう慣れたし、そんな心配すんなよ。」

スバルが言う「いつもの」とは、チャミの餌取りのことだ。
チャミの餌は崖に生えた、変な色の葉っぱ。
何て種類の植物か判らないが、チャミはそれしか食べない。

着替えてから家を出て崖に向かう。
いくら慣れたといっても、足場があまりない崖を降りるのはやっぱり怖い。
そっと、慎重に、一歩ずつ足を下ろしていく。
…あった。
左足のそばに、何本か生えている。
右手を崖から離して、葉っぱへと伸ばす。
その時だった。

「ミュンッ♪」
「チャ、チャミッ、おいっ向こう行けって!こっち来んなっ!」

チャミがとたとたと走ってくるのが見えた。
慌てて追い払おうとするが、完璧に無視されている。

「バカっ、ちょ、あぶねぇって!わっ、何すんだよっ!」

いきなりチャミが俺の額を強く押してきた。
ただでさえ不安定な状態で崖に掴まっているのだ、ちょっとした刺激でバランスを崩してしまう。

「わわっ、うわぁっ!」

右手で掴んでいた草は千切れ、足場が崩れる。
体が下へ落ちていくのがわかる。
漆黒の口を大きく開いた崖は、そのまま俺を悲鳴ごと飲み込んでいった…―

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