ブック

□終焉
1ページ/1ページ

 


赤く燃え上がった海と、そこに沈んでいく仲間たち。

トダカは、胸を焼かれているかのような焦燥を感じ目を閉じた。


―“ミネルバ”さえ堕とせばっ!

上擦った「総司令官」の声がブリッジに響いた時、トダカは全てを捨てた。



――いや、全てではない。

一つだけ、たった一つ譲れない想いだけを胸に抱いた。


―オーブを護る―


そのために“ミネルバ”を沈め、連合に忠誠を示す。

それがどれだけ滑稽かは、きっと我々が一番解っている。
だからと言って、ここで引くわけにはいかないのだ。



オーブを護るために、

世界にこの意思を示すために、

無念に散っていく仲間のために。


旗艦“タケミカズチ”は炎に包まれ、その半分がすでに海に沈みつつあった。

その艦の甲板に、ザフトのモビルスーツが降り立つ。


炎に照らされ、真っ赤に光るその機体をトダカは真っ直ぐ見た。



「“ミネルバ”には、悪いことをしたな…」



オーブは彼等に、何の恨みもなかったのに。


トダカは再び目を閉じる。


俺の時代は終わった。


けれど、オーブは…

その意志を継ぐ者がいる限り、オーブは終わらない。滅びない。

目を開けると、巨大な剣を振り上げるモビルスーツがいた。









…ああ、そういえば
シン・
アスカは今どうしているのだろう。

家族を失い、膝を抱えて独り泣いていたあの少年。


ほんの一時だったが、この地でまるで家族のように共に過ごしたシンは…。








光る刃が“タケミカズチ”に振り下ろされたその時、トダカは微笑んだ。




心配はいらないだろう。

なぜなら彼も、このオーブの意志を継いだ一人なのだ。



だから、大丈夫。


彼は、きっと強く生きているはずだ。








振り下ろされた剣は、トダカ一人を乗せた“タケミカズチ”を真っ二つに切り裂いた。











[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ