ブック

□お返し
1ページ/1ページ

 


好き、大好き。
愛してる、愛しい。








「キラ、何か欲しいものはありませんか?」

「欲しいもの?」


テーブルに残された一人分の朝食を腹に掻き込むキラを見ながら、ラクスはニコニコと言った。


「知ってますか?今日はホワイトデーだと」

「うん。もちろん、知ってるよ?」


だって、2月にもらったチョコのお返しを、今日のために三週間も前から考えてたんだから。
その言葉を朝食と一緒に飲み込んで、キラが言う。


「わたくしから、お返しです。欲しいものを言ってくださいな」


キラは「は?」と首を傾げた。


「いや、ホワイトデーなんだから、それって僕の台詞じゃ?
それに、僕はラクスに何もあげてないよ」


キラの言葉にラクスは意外そうに目を見張って、ふるふると首を横に振った。


「いいえ。いいえ、キラ。貴方はわたくしに沢山くれました」

「?」

「たっくさんの、幸せです」


カチャンッと、フォークが食器に落ちた。


「だから、お返しです。わたくしからキラに幸せをあげたい」


そう言われて、泣きたくなった。

なんて馬鹿で愛しい子なんだろう。


沢山“幸せ”をくれてるのは、ラクスのほうだと言うのに。


「キラ、欲しいものは?」

「……じゃあ、ラクスが欲しいな」







[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ