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□お返し
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好き、大好き。
愛してる、愛しい。
「キラ、何か欲しいものはありませんか?」
「欲しいもの?」
テーブルに残された一人分の朝食を腹に掻き込むキラを見ながら、ラクスはニコニコと言った。
「知ってますか?今日はホワイトデーだと」
「うん。もちろん、知ってるよ?」
だって、2月にもらったチョコのお返しを、今日のために三週間も前から考えてたんだから。
その言葉を朝食と一緒に飲み込んで、キラが言う。
「わたくしから、お返しです。欲しいものを言ってくださいな」
キラは「は?」と首を傾げた。
「いや、ホワイトデーなんだから、それって僕の台詞じゃ?
それに、僕はラクスに何もあげてないよ」
キラの言葉にラクスは意外そうに目を見張って、ふるふると首を横に振った。
「いいえ。いいえ、キラ。貴方はわたくしに沢山くれました」
「?」
「たっくさんの、幸せです」
カチャンッと、フォークが食器に落ちた。
「だから、お返しです。わたくしからキラに幸せをあげたい」
そう言われて、泣きたくなった。
なんて馬鹿で愛しい子なんだろう。
沢山“幸せ”をくれてるのは、ラクスのほうだと言うのに。
「キラ、欲しいものは?」
「……じゃあ、ラクスが欲しいな」
。