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□ありがちな話
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「…どうしましょう」


ラクスは、ふう、と溜め息をついた。

彼女のすぐ隣でパソコンの本を読んでいたキラは、それを閉じてラクスに向かって首を傾げる。


「ラクス、どうしたの?」


問われたラクスは、深刻そうな顔で答えた。


「なんだか変なんです、キラ。」

「変って?」


キラはラクスをじっと見つめてみる。
だが、ラクスに何か異変があるようには見えない。


「…キラ。
あまりわたくしを見ないでくださいな」

「…どうして?」


ラクスは頬を赤く染めた。


「その、胸が苦しくなるのです。貴方に見つめられると…」


そういって、ラクスは自分の胸元に手を置く。

キラは、何度も瞬きをした。


「…キラと共にいますと、身体中が熱くなって胸が苦しくなるんです」

「………」

「今だってそうです。
心臓がドキドキ高鳴って、泣きたくなるのです。
キラ、これはなんという病気なのでしょう?」


ラクスは片方の手で頬に触れる。

困った時によくするポーズだが、今回は頬の温度を確かめるに。


「やはり、こんなに熱くなってますっ。
困りましたわ…」

「…えーっと、ラクス?」


キラは、頬を掻きながら小さい声で呟いた。



―自惚れでないと、そう信じているから。

だから、それはね?



「恋の病っていうんじゃないかな…?」

「…こ、いの…病…?」




数十分間、キラとラクスはお互いに頬を赤く染めて微動だに出来なかった。










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