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□落ち葉
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木枯らしに吹かれた落葉達が、円を描きながら舞い散る。

カサカサと枯れ葉同士が擦れる音が耳に届いて、キラは秋の訪れを感じ始めた。


いつもの散歩コースを、キラは珍しく一人で歩いていた。

本来ならば、彼の一歩後ろに桃色の髪を持った少女がゆっくりと付いているのだけれど、
今日彼女は友人宅を訪ねてるので、いない。


背中にかすかな淋しさを感じながら、キラは黙々と歩き続け、
とある公園へとやって来た。


そこは以前、カリダやマルキオ達と共に花見をしに来た場所で、
何種類もの木々がこぞって美しい花びらを咲かせていたものだ。

しかし、季節は巡り
夏も過ぎて現在は秋と呼ばれる季節。


美しい花びらを開かせていた木達は花も葉も全部散らせ、丸裸になっている。



風に吹かれては舞う枯れ葉をベンチに腰掛けて見ていたキラは、ふと立ち上がって、
落ち葉、枯れ葉が一層敷き積められた場所へ来た。

葉を踏むと、カサッと音が鳴る。

その音が何故かとても心地よく聞こえて、キラは僅かに微笑む。



カサッカサカサ


いつの間にか、夢中になって落ち葉を踏んでいた。
















カサカサカサッ



「何をしてますの?」


「っぅえ!?」


ガサッと足が滑る。


よく耳に馴染んだ声が聞こえ
た。
ここにいるはずのない、愛しい声。


「ラクス!どうして…」


振り返れば、いつも一歩後ろに付いてくれている少女が微笑んでいる。


「お家に帰ったら、キラがいなかったので探しに…それよりも、何をなさってるんですか?」


ラクスが首を傾げた。

キラの顔がボッと赤く染まる。


「あ…えっと、落ち葉を踏むと…良い音が…出てね」


キラは堪らなくうつ向いた。
恥ずかしい。
公園で一人、笑いながら落ち葉踏みに夢中になっていたなんて…まるで小学生だ。



カサッ


「まあ、綺麗な音!」

「へ?」


顔を上げると、ラクスがキラの目の前で
先程のキラ同様に落ち葉をカサカサ踏んでいる。


「楽しいですね、これ!」


跳ねたり、蹴ったり、ラクスはクスクス笑いながらキラを見た。


「もう、しないんですか?」


風が吹いて、キラとラクスの周りにあった落ち葉を飛ばした。

「あら…」と、ラクスが残念そうに呟く。


キラはそっとラクスの手に自分の手を重ねた。


「キラ?」

「もう少し、やろっか」


恥ずかしそうに微笑んで、ラクスの手を引いて落ち葉の集まる場所へ移動する。

ラクスは微笑んだ。





とある日の夕暮れ時
紅葉色に染められた二つの影が奏でる心地の良い音がたえまなく響いていた。










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